この春、大学へと進学し仙台へと引っ越してきた椎名。
その彼が引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。
初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか?」と持ちかけてきた。
河崎と名乗る、彼の標的は―たった一冊の広辞苑・・・
そんなおかしな話に乗る気などなかったのに、断りきれない、優柔不断な椎名はなぜか決行の夜、モデルガンを手に書店の裏口に立ってしまう。。。
その計画の後、椎名は河崎やペットショップの店長をしているという麗子から2年前の「ある事件」を聞かされることになる。
2年前、ペットショップの店員琴美、そしてその恋人であるブータンからの留学生キンレィ・ドルジ、そして河崎を中心とした3人の物語があった。
当時、世間で多発していたペット惨殺事件。
その犯人たちに出会ったことにより、琴美が犯人たちに目を付けられてしまう。琴美は何度も襲われるが、ドルジや河崎に助けられ、逆に犯人たちを捕まえようとする。。。
現在と2年前の物語が交互に読み進められていき、やがて二つの物語、ペット襲撃事件と現在の本屋襲撃が次第につながっていく。。。
う~む、うまいこと表現できませんが、一見バラバラに進行する二つのお話を、ラスト、一気収束させていくのはさすが、井坂幸太郎さんですね。
井坂さんの作品は、異文化をテーマにした作品も多い。
例えば「オーデュポン・・・」では現代の「日本」と隔離・鎖国状態の「荻島」
本作の「日本」と作中、ドルジの「ブータン」のブータン人の生き方、宗教観・輪廻転生等々。
また、圧倒的に「悪い」ヤツを登場させますよね。そう身の毛もよだつような、誰もが「悪い」と思うような人物。
本作での「ペット襲撃の3人組」しかり、「オーデュポン」の警官しかり、「重力ピエロ」のあのレイプ男しかり・・・
そういった唾棄すべき、どうしようもない「悪いヤツ」と否応なく関わってしまった主人公たちとの「戦い」も描いています。
そして、切なくも哀しいラスト、だけど読後には何か清々しさも残る作品でした。
面白かったです。