先週末、久しぶりに京都で 師匠たちのダンスを観た。
セレノグラフィカ探索室公開シリーズ#2
『夜のことば』
セレノ作品に出演経験のある升田学さんと共に
西陣ファクトリーガーデンで
合計4回の公演が行なわれた。
どの回にも大勢の方が足を運んでいたが
4公演を全て観たのは
おそらく、いや、間違いなく私だけであろう。
なんてったって、セレマニアですから。
「なぜ同じものを四回も見るの?」と驚く人もいたが
私からすれば「なぜ1回で満足なの?」である。
だって、これは映像上演ではないのだから。
1回ごとに違うものが見えてくるのが
舞台芸術の面白いところである。
実際、4回の公演はそうだった。
これから書くことは
セレマニアの視点から見た感想なので
師匠たちのことばかりだということを
どうかご了承いただきたい。
先にちょっとだけ述べておくが
共演なさった升田学さんも
パフォーマー、ハリガネアーティスト、デザイナーと
多彩な肩書きをお持ちの素敵な方である。
維新派で主役を張っていた経歴をお持ちだが
それって間違いじゃないの?
と訝しく思えるほど、セレノ世界に溶け込んでいる。
それでは、セレマニア節で
以下に公演の記憶を記します。
鑑賞1回目は、とにかく全て初めて観るものばかり。
予備知識を持たずに観たので
真っ白なスケッチブッグに
一筆づつ色が足されていくかのように
私の頭の中も真っ白な状態から 少しずつ
色が足されていくような感覚だった。
演者の動きを目で追うのに必死だったり
場内に設らわれた舞台美術に目移りしたり
少し長めの舞台転換タイムにドキドキしたりと
とにかく心が忙しい。
2回目は、作品の構成がわかっているので
先ほど見落とした部分を
違う場所に座って観てみる、という試みをした。
座席を変えただけなのに 演者の身体は
先ほどとはまるで違って見える。
また、その席からだと手前にある設営物が壁となり
演者が僅かしか見えないシーンもあるのだが
それはそれで面白い。
見えないのがストレスになるのではなく
チラリズム的な景色が、観る側の想像をかきたてる。
一夜明け、西陣2日目。
鑑賞三回目には 初めて観る師匠の姿があった。
何がきっかけかわからないけれど
前半、まほさんの心に小波が立っていた。
いつも器用に、全てをきちんとこなす人が
この回に限って小道具を上手に操れない。
どれだけ数多くの本番をこなした人でも
突然、ガクッと緊張の穴に落ちてしまうことを
この日、私は初めて知った。
ダンスのエアポケットだ、と思った。
しかし、このままでは終わらないのが
まほさん凄いところ。
強い精神力で持ち直し
後半のソロダンスから最後の3人のシーンまで
きっちりと踊り終えた。
さすが、のひと言に尽きる。
4回目、最後の公演では、凄いものを観た。
まず、前半のあびさんのソロダンスが
もう、とても素晴らしかった。
1~3回が全くダメ、という訳ではないが
どの回も手探り状態で
身体のはまりどころを探しているかのように見えた。
しかし、最後の回であびさんが動き出したとき
何かのきっかけで
「あ、はまりどころを見つけた!」と気づいた。
赤いネクタイと踊る男。
物語のワンシーンを見ているかのような
叙情的なダンスだった。
そしてもう一人。
3回目にダンスのエアポケットから
見事復活したフェニックス・まほさん。
最後の回は、全身からダンス熱が沸き立っていた。
まほさんは、動きをきちんと決めて踊るタイプだと
私はずっと思っていた。
だが、最後のこのソロでは違った。
いつもの緻密さを持ちつつも
身体を通じて溢れる感情を放出するかの如く
大胆に力強く踊る様が、なんとも美しい。
踊り深まるほどに身体のエンジンが温まるのだろうか
絶好調なコンディション状態が
延々とクレッシェンドしているかのように見えた。
終盤は身体がフルスロットルに入ったのだろうか
気迫を感じる回転力と回数。
その後、目を回して床に倒れこんでも
意識をしかと保ちながら
「床を引っ掻く」振付を
これまた実に力強くしていらっしゃった。
こんなまほさん、見たことない。
甚だ勝手ながらも私はそこに
ダンサー・隅地茉歩の意地と張りを感じ
思わず目頭を熱くしてしまった。
『夜のことば』とは、夢の断片を紡ぐ作品。
今後もシリーズ化していくというから
先々が楽しみである。
最後にもう一度書かせていただく。
合計4回の公演には大勢の観客がいたが
すべての公演を見たのは、私だけ。
それぞれの回にあった
それぞれの異なる瞬間を知るのは、私だけ。
なんとも贅沢な気分です (´ー`*)