長い1日、再び | ピロ日記

ピロ日記

徒然なるままに

旅行記や日々の想いを書き連ねてます

8月28日、市民文会館主催の
四世代によるダンス&アートセレブレイション『ぱっかぐらの森』の
一環イベントである野外ダンスに参加した。
昨年に続き二度目である。

午前10時から地下リハーサル室を借りて
キュウティと稽古に励む。
ところが、本番当日になってつばさくんが
体が回復したので出演できると言い出した。
これにはビックリである。

「そんなの嘘だあ!」と突っかかる私に対し彼は
「本当です。もう大丈夫です。」と一歩も引かない。
昨日まで足を引きずって歩いていた人が
一晩で症状が良くなる訳が無い。
そして、正直な気持ちを言えば
なぜ本番当日になってそんなことを言うのか
この二日間、必死で練習を重ねてきたキュウティのことを
どう考えているのか、と思った。

リハーサル室で3人、淡々と話し合いをした。
キュウティがいつものホワワンとした口調で
「つばさくん、もう治ったの?」と聞くと
「治ったのではなく回復したの。」と答えた。
「じゃあ、もう大丈夫なの?」
「うん、大丈夫。」
それを横で聞いて「そんな訳なかろうが!」と思う私。

一見冷静だが内に燃える闘志を秘めたつばさ。
「私のことは構わないから
つばさくんが出場できるならば、そうしたほうがいいよ。」 

と言うキュウティ。
そして、頑なに出演する気のつばさの
その裏にある真意を探ろうとする私。
もしかしたら、怪我をし欠場することをまだ気に病んでいるのか?
私がつばさくんと再びデュオで踊るのを楽しみにしてたことを
一番よく知っているのは、彼自身だからである。
もしそうだとしたら
彼にここまで無理させているのは私ではないか。
三人それぞれの想いが交差する室内に重い空気が漂う。
話し合いは決着がつかず、午後に持ち越しとなった。

つばさくんは、午前中いっぱいかけてストレッチをし
午後には立ち上がり体を動かした。
最初は、驚くほどスムーズに歩き
難なくターンもして見せた。
針灸で治療していると聞いていたが
ここまで効果があるものなのか、と驚いた。
だが、次第に左足をかばう動きに変わり
試しに踊ったユーミンタンゴは
所々動きが詰まる。
これでは、到底無理である。

今回の演目『連なる夜』は
男女ありきで作った作品なので
女同士で踊って違和感を感じるのは仕方がない。
レジ袋も、触って抜くも
つばさくんの動きが素晴らしいことは十分承知している。
だが、こんな状態で踊らせるわけにはいかない。
どんなに出演したい本番があったとしても
ひどく体に支障をきたしているときは
欠場するのも大切なことだと思う。
ましてや、彼はこれから先のあるダンサー。
今、無理して踊り、怪我が悪化し
後々引きずるような後遺症が残ったりでもしたら
それこそ後悔先に立たずである。


そして、最も重要なことがひとつ。

私達には

今日の本番を引き受けている責任がある。

例え誰が出ようと

本番の場に立った者には

その場の一切を引き受ける責任があるのだ。

今日のつばさは、その責任を背負える状態ではない。

「今日はキュウティと二人で踊る。」
そう決めた後は
肝が据わったというのか
頭の中の霧が晴れたというか
自分の中で、今日パーニョが進むべき道が見えたような気がした。

16時の本番直前。
野外ダンスエリアに到着し
まずは音響機材をチェック。
ちゃんと音が出ることを確認したのち
本番に向け精神統一をしていたら
突然、主催者側から心騒ぐ申し出があった。
客席側が日向なので
これから約30分間ご覧になるお客様が辛いだろうから
正面の位置を変えたいとのこと。


これにはキュウティが慌てた。
正面の方向が変わることで
立ち位置やハケの場所が分からなくなる、と言う。
今まで知らなかったが、なんと彼女は方向音痴なのだそう。
そういえば、昨日現場リハーサルをしたときも
自分の動く方向をなかなか覚えられず苦労していた。
主催者にしてみれば、ただ正面が前後入れ替わっただけ、かもしれない。
だが、日が当たることは事前に解っていたことであり
それを何故今頃になっていうのか。
前日に現場で入念に場当たりを繰り返した者に
いささか失礼な話ではないか?

そのとき、ふと思い出した。
“あれ?こんなこと前にもあったなような・・・。”
でも、それがいつだったか思い出せない。

私に決断を迫る主催者。
キュウティが本番で方向を見失うことが心配だったが
この炎天下で30分じっとしているお客さんのことも考えれば
日陰となる場所を客席にするのがベストであろう。
万が一、熱中症でお客さんが倒れてしまったら一大事である。
結果、正面を前後入れ替えて、本番はスタートした。


トップは私たちセレノコンパーニョ。
出だしは好調だった。
キュウティは緊張しながらも方向を見失わず、ちゃんと動いていた。
だが、私がレジ袋をお客さんに手渡すシーンで
またもやハプニングが発生。
手渡すタイミングで流れるはずの曲が
全く聞こえてこないのだ。

最初は、音響係のつばさが

私の手渡す動作が見えなかったのかも、と思った。
だが、無音で踊り続けながらつばさを見ると
慌てながら機材をチェックしていた。
どうやら、音源機材であるCDラジカセを繋いだアンプから

上手く音が出ない様子。
彼が機転を利かせて
CDラジカセ本体のボリュームをフルにしてくれたおかげで
私の耳にようやく聞き慣れたzazが届いた。

そのとき、またもや思い出した。
“あれ?こんなことも前にあったなぁ…。”

だが、もはやそんなことはどうでもよかった。
今は、キュウティと踊る楽しさを分かち合うことが大切。
何事もなかったように私達は踊り続け
ユーミンタンゴがかかるころ
ようやくアンプから音が聞こえてきた。

ユーミンタンゴは
師匠が昨年末にクリスマスプレゼントとして
パーニョに作ってくださった大切な作品。
今年一番たくさん踊り続けている作品である。
だからここには一層気持ちが入る。

腕を高く上げ天を仰ぐと
青空と夏を名残惜しむような

モクモクとした白い雲が広がっていた。
その広大な風景が実に気持ちよく
自分のダンスに集中して踊ることができた。
踊り終わった後
お客様からの拍手で我に返ったような気分だった。

本番が終わり、つばさがハプニングの原因を教えてくれた。
ここに書くのもバカらしいほどの無責任なミスだっのだが
それは決して私達パーニョがしたことではない

ということだけ記しておきたい。
また、ぱっかぐらの森に出演するため
今回の野外ダンスには出なかったがっぱいが
偶然居合わせたこの音無ハプニングに
力を貸してくれたことも感謝したい。

現場を立ち去るとき
ビデオカメラを片手に歩くS東さんを見かけた。
思えば、この方に私達の成長ぶりを見てほしくて参加を決めたのだった。
でも、最早そんなことは頭の片隅にもなかった。
つばさくんが怪我をしキュウティが代役に決まって以来
私はS東さんの存在をすっかり忘れていた。

そして、私はその時ようやく“以前にもあったこんなこと”が
いつのことだったか思い出した。
それは、昨年8月に出演した
市民文化会館主催のダンス&アートセレブレーション
『バラ色の人生~葵タワーで踊る~』。
交通規制の時間を間違えたので、踊る場所を変えてほしいと言われ
三回目の本番ではプレイヤーの調子が悪くて曲の頭が少し飛んだ。
なんだ、同じ主催者じゃないか。
パーニョは余程、文化会館との相性が悪いのね。

思わず苦笑した。

17時30分から、パーニョメンバーも出演している『ぱっかぐらの森』を拝見した。
山田珠美さんの作る世界は今年も素晴らしかった。
そして、パーニョメンバーがそれぞれの持ち味を生かして踊っていたことも嬉しかった。

帰り道、つばさとキュウティと飲んだビールは
体中に染み渡り美味しかった。
こうして、私の長い1日は終わった。
今夏最後の本番は色々あったけれど
清々しい気持ちで終えることが出来て良かった。


今回の本番でお世話になった全ての皆様に
心から感謝いたします。