地獄の5丁目8番地:RAクラスで頭角を現す | ピロの屋本館@ロサンゼルス

ピロの屋本館@ロサンゼルス

天使の女王の町Los Angelesでの生活記録

 

Spring 2022

 

image

 

昔から、頭を使う事は

然程得意ではなかったけど、

手先の方は

割と器用ではあったと思う。

 

 

そんな私が、この厳しい

モーチュアリーサイエンスに入学して

初めて日の目を見る事になったのが、

このRestorative Arts,

遺体修復技術クラスと

エンバーミングクラスだった。

 

 

今回は修復クラスのラボのお話し。

 

 

このクラスを

長年担当しているのは、

コリン教授。

 

 

新入生だった頃には

とても厳しい先生だと思ったけど、

このクラスはアート的要素を

含んでいる事もあり、

かなり自由な雰囲気だった。

 

 

例えば、ラボの時間は、

邪魔にならない音量で

クラシックではないんだけど、

そんな感じの音楽が流れている。

 

 

3時間10分という長さだったので、

間に15分程度の休憩時間は

あるにせよ、その他いつでも、

5分10分の珈琲休憩を

許可されていた。

 

 

理由は、ずっと同じものを見て

作業をしていると、

時々目が慣れてきて

違いが分からなくなったりするから。

 

 

そんな時に少しでも離れて

休憩を取る事によって、

見えなかったものが見えてくる

とかもあるため。

 

 

もちろん、作業を中断して

他の生徒のところへ行って

話したり、教え合ったりもオーケイ。

 

 

そんな感じでゆる~く楽しく

学べたクラスだったので、

週に2度あるこのラボの時間は

楽しかった。

 

 

そんな修復クラスのラボ内容を、

画像を交えて解説してみます。

 

 

ラボでの課題は、

ワックスを使用して

人の頭部を作ること。

 

 

その為、まずは顔のパーツを

それぞれ作ってみて

練習することから入る。

 

 

昔から、鼻が一番

簡単だと言われているということで、

我々の最初のラボ課題は鼻。

 

 

鼻だけぽこっと作るのも

若干難しかったりするので、

顔全体をなんとなく作っとく。

 

 

眉毛の辺りの盛り上がりと、
鼻になる部分を、
こんな感じでざっくりつける。
 

 

ナデナデしてスムーズにする。

 

 

それからワックスを丸めて、
鼻の盛り上がり部分につける。

 

 

またナデナデして、
鼻として形作っていく。
 

 

鼻の穴や
鼻の下の凸凹も作ります。
 
 
こんな風に2,3度練習したら、
ラボにある見本から好きな物を選んで、
それと同じように作って提出する。
 
 
以下が私の最初のラボの作品。

 

提出用紙の裏側に名前を書いて、

ラボのテーブルに置く。

それをクラスが終わってから

先生が採点。

 

 

次のパーツは口。

そしてこれが私の

最初のワックス唇。

 

 

全体的な形やシワは

まぁまぁできているけれど、

唇の間のラインなどは

完全に一直線笑

 

 

これは柔らかさを求めて
作ってみたけど、まるで
魚がちゅーキスマークしているように
なってしまった笑
 

 

image

 

唇はなんだか楽しくて、
時間が許す限り
何度も何度も練習を重ねた。

 

 

全体的な唇の形や柔らかさ、
それから口の周りの感じも
表現できるようになった。

 

 

そして見本と一緒に提出。
 
 
それでもやっぱり、
先生が作った見本ほどの
リアル感には勝てなかったし、
若干違っていた泣

 

 

講義の方の勉強も

夜中まで頑張る。

 

 

次の課題は目。

 

 

これも同じで、
ワックスでニョッキのような
ボールを作り、目の場所につけて
なでなでしていく。

 

 

すでに鼻と口は練習済みだったので、
目を作る前に、
それらも復習がてら
サクッと作ってから始めた。
 

 

ご遺体なので目は必ず閉じている。
”なら簡単なのでは?”
と思うかもしれませんが、
それが意外にもそうでもなかった。
 
 
鼻と目の間のくぼみとか、
瞼の上のくぼみとか、
その微妙な肉付き具合やら、
閉じた目のラインの位置
1つ違うだけでも、
雰囲気が全然変わってしまうのだ。
 

 

悪戦苦闘しながら
ラボで頑張ってる図。
 

 

そして最後の顔のパーツは耳。

 

 
これも想定外だったのが、
耳の中のぐちゃぐちゃが
以外に簡単だったこと笑

 

 

これも同じで、
最初はかまぼこの1切れ
みたいなのを作り、
次にメインになる
3つのくぼみを掘る。
そしてナデナデ。
 
 
image
そして提出。
 

 

結局私は、

ラボの顔パーツプロジェクトでは、

全てを満点の25点で

パーフェクトスコアを取った。

 

 

先生からも、
絶賛のコメントを頂けて
大満足おねがい飛び出すハート

 

 

傍ら深夜まで、

エンバーミングクラスの

テストやクイズのノート作り。

 

 

さて、ワックスの他に

こんな練習もした。

 

 

まつ毛

 

 

そして眉毛
 
 
まつ毛も眉毛も、
毛の向きというのがあるので、
人それぞれ違うにしても、
ラボでは一般的な向きで
付ける練習をした。
 
 
ここでも重要になってくるのが、
顔の骨や筋肉を考慮すること。
それらは講義で習っているので、
それらを実践する場所がラボ。

 

 

2種類の眉毛笑

両方いるでしょ、こんな感じの

眉毛の人笑

 

 

さて、学期も後半になると、

いよいよ最終プロジェクトの

ヘッド作りに入る。

 

 

この頭蓋骨の模型をベースに、
ワックスを使って
自分の選んだモデルの頭部を
実際に作るという課題。
 
 
私はボーイフレンドを
モデルにした。
 
 
まずは前方からの顔、横顔、
それに斜めからの顔を画像を撮る。
 
 
サイズを決める
計算方法があるので、
それで計算する。

 

 

サイズが決まったら、
その比率を模型に当てがって
ワックスで顔を作っていくと。
 
 
計算はあくまでも一般的な比率なので、
その比率をさらに
自分のモデルと合わせて調整し、
それぞれのパーツを作り
ヘッド全体を完成させるという
より一層プロフェッショナルな方法。

 

 

そして以下が
顔の形が完成した私のヘッド。
 

 

凄いでしょ、あの骸骨が

ワックスでここまでなるんです笑

 

 

横顔
 
 
ここから更に色を付け、
眉毛、まつ毛、それに
髪の毛を付けて完成となる。
 
 
完成した画像も実物も
まだ家にあるのですが、

それをアップすると

彼の顔を公開することになるので、

ここでは

このベースヘッドまでにしておきます笑

 

 

というのはですね、

自分で言うのもなんですが、

本当に本物とそっくりなの笑

 

 

ラボでもちょっとした

お笑い事件があったくらい。

 

 

ある日ラボの作業中、

休憩がてら他の生徒のところへ行って、

お喋りしたり、

ヘッドを見せてもらったり

していたんです。

 

 

すると、クラスで唯一の

男子生徒だったフリオが、

なにやら言い始めた。

 

 

周りが笑ってるんで振り返ると、

作りかけの私のヘッドを

フリオが抱えて生徒1人1人に、

 

『誰かこのヘッドを買いたい人いる?

$25だよ!』

 

と言って売ろうとしてた笑

 

 

すると何人かの生徒が言った。

 

 

生徒A:『あんたのでしょ~

それなら要らないわ笑

 

生徒B:『いや、フリオのじゃないよ、

ピロのヘッド持ってるよ』

 

生徒C:『あ~、ピロのね~!

確かに、時間節約してAもらえるなら

$25出す価値あるわ笑

 

 

ワックスで見本やモデルと

似たように作るって、

思ってるより難しいんですよ。

 

 

見ているだけだと、

”もっとあーすれば”

”もっとこーすれば”

と思うんだけど、

いざ直そうとすると

これが意外とできないというね~もやもや

 

 

残念ながらというと

ちょっと失礼だけど、

やっぱりこっちの人って

日本人と比べると、

あまり器用ではない。

 

 

ある日なんてクラスメイトの

エスタがこんな事を言った。

 

 

フリオが、私がヘッドを

作っている時に、

 

『わぉ~、ピロ!これは凄いな、

どうやってやったんだびっくり?』

 

と聞いて来た時に、

エスタが呆れ顔で

首を横に振りながら言った。

 

『見てみ、ピロのあの細い指!

あれじゃラボのどの道具使っても

勝てないわニヤリ

 

 

 

そんな感じで

私なりに楽しんでやっていた

RAラボだったけど、

そんな私でも、全く最初から

上手かったわけではない。

 

 

コリン教授が

他の生徒に教えている時や、

実際にやって見せてくれる時などに

私は必ず傍に行って、

一緒になって説明を聞いて、

先生が実演してくれるのを見て、

そして席に戻ってすぐにやってみて、

なんて事をしていた。

 

 

先生も先生で、

別の生徒の作品を教えながら

実演してくれるんだけど、

私が行くとなぜか、

その生徒よりも私の方を見て

説明を始める笑

 

 

お陰でスキルは

グングンとアップし、

それが功を奏したのか、

先生からも

とても気に入られたようだった。

 

 

講義の時も同じで、

先生の説明を

必死になって聞いていたので、

そういった生徒の姿勢は

教えている方からすると

やはり嬉しいものなのだろう。

 

 

先生と目が合う回数が

とにかく多かった。

 

 

そして

この修復クラスで、

私はコリン教授が好きになった。

 

 

入学当初は怖かった

コリン教授。

 

 

でも段々先生を

理解するようになった時に

見えてきた事は、

コリン教授はアメリカ人だけど、

礼儀とか作法を

とても重んじる方だということ。

 

 

だから

チャラチャラして

入学してきた生徒たちには

とても厳しいけれど、

うちの学部のルールはもちろん、

一般的常識的な礼儀作法などを

わきまえた生徒や

やる気のある生徒には、

しっかりと教えてくれる、

そんな人だと思った。

 

 

その辺りはね、

日本人であれば

当たり前なので、

そんな古きを重んじるタイプの

コリン教授と私が合うのは、

なんの不思議もなかったのかも

しれない。

 

 

 

次の地獄記事は、

エンバーミングラボのお話し。

 

 

ではではお楽しみにベル