7テスラ 見える病は 炙り出す



アンメットというドラマをやっていますね。

前年あたりから下火になった医療モノで、脳外科を取り上げた珍しい題材のドラマなんですよね。救急とか、病理はそこそこあるんですけど。まぁとっつき易い診療科だからでしょうね。作りやすいというか。

数年前、放射線科を初めて取り上げたラジエーションハウスも好評で今でも続編を特番制作していますよね。

放射線科は基本的に臨床やりませんので、病院の中でも放射線科の読影室は穴倉みたいな目立たない場所にある事が多いです。

医師は一般的に、外来や病棟で働きその他は医局で事務作業や論文を読んだり書いたりとなかなか忙しいです。

先生達は患者が申込んだ生命保険の診断書やら、他院からの紹介やり取りの文書、介護特にケアマネがウザイほど送ってくるしょうもないFAXなどに目を通さねばなりません。

ケアマネは受け持ち患者の様子を知らせて来たり○をしたいと言っているから先生のご意見を賜りたく…とどうでもいい事を逐一送りつけてくるのですが、特段注意も無ければ無視でいいと思うのになまじ署名欄が作り付けてある為に先生達は返信しないといけないと思い込んでいます。真面目ですよね〜。

先生に配る事務方も返信の返却を求めたり、先生が無視しているのを催促して求めます。必ずしも返信しなくても良いはずですが、依頼したものが返って来ないという1点に縛られて先生達に署名を強要します。

そこはお門違いだと、代わりに言い聞かせてもわからないのが病院の決まりにがんじがらめになって自分の頭を使わなくなった事務方。

なんなら私が書いてやるぞ?

なりすましなんて普通だ、医療機関は。

ケアマネからくる自己満足の勝手な押し付け文書には、散々先生達から文句が出ている事をケアマネージャーは知って欲しいです。

「こんな事、私に関係ある?!」とか「いちいち返さないといけないの?」とか時々不満噴出して相談して来られます。

特に言うことも無ければ無視してかまいません。調べると年に何回も送ってくるケアマネがいるのでその都度に対応していたらバカらしいです。

これは止めないと図々しいにもほどがある。

義務では無い事を割り切るのも先生には必要。

丁寧に毎回応じているくせに実は怒っている先生が「こんなん書く必要あんの」と手に持って来るのですが見ると、こういう時はああしてあげて下さいとか、こういう場合はやってあげて下さいとか、内容は今のアナタと別人?って位に色々満載。

「いや、書かなくていいから。先生、自分で特に意見は無いに○してるじゃないですか。ここに○したら何か書いちゃダメよ。何で書いてるの」と、こんなやり取りです。

いい顔して毎回対応してたらつけ上がるケアマネはいっぱいいます。先生から返信が来るから疎通できていると勘違いするんです。いちいち医師の意見が無いと自分で判断しなくなり努力しなくなります。

過保護にしているのもまた医師なのです。

そういうループに入っていた先生がさすがに気の毒で、1回だけケアマネに迷惑だから御遠慮下さいって苦情を言ってやったけど。

例えば担当が代わりました、という挨拶のFAX。返信署名欄があるから、本来チラ見するだけの紙に先生は署名してFAXを誰かに頼まなければなりません。

何にも考えてない強制なんです。

こんな先生達の可哀想な姿は病院勤務でもなかなか知る人はいません。

放射線科の話に戻りましょう。放射線科はそういう一般の医師とは別室に居る事が多いです。読影室です。電子カルテとは違う別のシステムを使っているからです。

そしてIVRをやるのも放射線科が専門です。カテーテルのことです。動脈瘤にコイルや薬剤を注入して固めてしまうとか。劣化、閉塞した血管に開通させたりステント付けたり。

ナントカ血管外科がやると思っていると思いますが、放射線科医の手技が多いように思います。そこまでの放射線科医が居ない病院は外科がやるしかありません。

だから臨床やらないと言っても患者担当しないというだけで病院の中でも大変ハイレベルな部門です。

そして現代は高度な医療機器ばかりですから、扱う技師のレベルアップも大変なのです。

勉強、勉強。

機械によっては資格が無いと操作できないですから、特定の技師が担当せねばならず休みのローテーションも頭が痛い問題です。

そしてMRIのお話に戻りましょう。

病院なら今やほとんどMRIがあります。

しかし1.5テスラがほとんどです。

イマドキの放射線は大変向上していますので、レントゲン1つとっても昔のぼんやりした写真とは全然違います。

めちゃくちゃキレイに写ります。でもそれでもダメなものも存在します。

例えばポキンと折れたらレントゲンでわかります。でもレントゲン撮って「骨折ナシ」と言われて安心して帰ったはいいが、2~3日しても何かやっぱり痛い…。

それで有事再診になっていたからもう1回行ってみたら「じゃあMRI撮ってみましょう」と言われた。

結果は骨折していました、じゃああれは何なの?レントゲン撮ったのあれ何?

ってなりますよね。時々ある質問です。

その気持ちはわかります。

余談ですがここまでお話してしまいますねニコ

1つ先に言ってしまうと、レントゲンではわからない骨折があるという事を知って下さい。

レントゲンはとても性能向上しました。

それでもわからなかった理由は幾つかあり、まず、後から進行して骨折に至った可能性があります。

打撲する→病院から帰って「骨折してなくて良かった〜」と痛いながら多少は庇いつつ生活して負荷がかかる→見えない微細な壊れかかった所が本格的に壊れる。

これが多い気がします。でも原因は受傷ですから、それによる骨折です。

そしてMRIは内部迄を精密に映し出せます。そこで、微細なヒビが判明します。つまり、骨折は骨折なんだけど骨折というほど明確ではなくうっすらヒビが入っている。この時点で挫傷という病名が確定します。

あと、レントゲンでわからないのか?という疑問です。本音を言うといくら性能が良くなってもレントゲンは所詮レントゲンだという事です。精密検査とは違う。そしてレントゲンの弱点はわかりやすく言うと平面で撮る事だと思います。面なんですね。正面から放射線を出して手前から撮る。透けて中が撮れるけど精度は落ちます。

だから肺癌健診てレントゲンを撮ってくれるけど、あんなんで見つかる人はラッキーとしか言い様がありません。臓器の中にある小さな腫瘍が写るワケが無いと私は確信しています。

レントゲンはあくまでも写真。カメラでカシャッと撮るそのまんまの感じ。

ではCTやMRIはどうなのでしょう?

CTとMRIの共通点は縦からスライス撮りする事ですね。キュウリなどの野菜を輪切り小口切りするのにそっくりです。

マルチスライスとかthin sliceという用語で指示を出しますが、今のCTはやはり性能向上しておりもう3mmスライスは当たり前。

例えば頭を撮ると、頭のてっぺんから3mm厚さで撮り重ねそれをそのまま重ね組み立てたら3Dの立体が出来上がります。

オペの為、細かい部分まで位置を把握できるのはこの立体化を可能にしたからです。

しかしそれは機械が自動的にやってくれるところまではまだ実現していません。

あんなに優秀でも、AIもできないのです。たくさんの画像を取捨選択し、調整をかけていくのは放射線技師さんです。同じ、撮るでもどんな風にどんな強さで撮るのか、技師のセンスと技量で随分と違うようです。

CTはそんなに薄く撮れるようになりましたが、でき初めの癌がそのたった3mmの中に入ってしまうと…写りません。あるのに写りません。

CTは速いです。数秒で広い範囲が撮れますから、今すぐ命の危険で一刻の猶予も無い患者は断然これです。

しかしMRIは何しろ時間がかかります。撮る前に身ぐるみ剥いで着替え、入れ歯も含め金属を外す作業。撮る前にトイレを済ませてもらう。ひとまず30分はじっと動かず頑張ってもらうので、言っても指示がわからない子供には無理です。

ただ、MRIは放射線を使いません。ですので機械音や閉じ込め状態に耐えられるならMRIを私はお願いしたいです。

このMRI、普通に病院にあるのは圧倒的に1.5テスラ。磁場の強さですが、3テスラの機械があるとうんと美しく鮮明です。

3テスラがある病院はそれなりの医師、それなりの技師がそれなりのレベルにあると思います。ただの機械と思うかも知れませんが、意識も作業も変わってきます。確かに撮るのは機械が撮るのですが、患者の患部を固定するポジショニングからして的確さが問われます。

3テスラがあれば非常によく映し出せると言えるでしょう。

例えば自分が検査受けるとしたら、やっぱり3テスラがいいな〜どうせ受けるならより詳しく写る3テスラがいいな〜。

ただし、点数は高いです。MRIの点数には簡単に言うと1.5テスラか3テスラの点数しかありません。1箇所撮っても何ヶ所も撮っても。部位の点数ではないんですね。

いわば機械に対する点数です。

しかもCTと同月にやればいずれかに2割低減がかかります。そんな3テスラMRI。

しかしアンメットで一瞬出て来た言葉に驚きました。

?!
7テスラ?!
いや〜聞いたこともありません。
1.5でも通常医療には充分、3でかなり劇的によくわかるレベルですがその倍以上の7!
だろうねぇ…ホント、見てみたいわ。
あのパソコン画面に映る脳画像が7かどうかはちょっとわかりませんが、滅多に手に入るとは考えにくいです。
参考にこれは👇🏻岩手大学の記事ですかね。

200ミクロンかぁあんぐり電子顕微鏡の世界ですね。
7テスラが医療の現場に導入される事は無いでしょう。10億としても専任の技師も必要になるのではないでしょうか。磁場管理も大変です。
言っても言っても金属持ち込みする患者はいますし、台無しになります。
ヘアピンはまだ見えるけど舌ピアスなんか最悪だもん。黙ってられたらわからない。
冷却システムが水か空冷式かにより経費も違ってきますが、ヘリウムガス使用だとリットル2000円そこそこで1機700万ほどにはなると見積もれます。
皆さんには有難くほとんど上がらない診療報酬でこの超高額機器を購入することは不可能です。もとがとれません。
でも、放射線科で医師代行で検査オーダーを出していたりしたからか、血が騒ぐんですよね〜おねがい
未知の7テスラ。見てみたい!
このドラマのこの一瞬スルッとあったセリフに、反応した人がどのくらいいただろうか。
これで撮ったらどんな悪性腫瘍でも見つかるに違いない。血液癌は無理かも知れないなぁ。
もしこのドラマで7テスラの存在が広まったら、国民は欲を言い出すだろうなぁ。
でもまぁ…思いっきりテレビみたいな影響力ある健康番組では無いし、そりゃ無いか。
7テスラ。とんでもない話だった。