海峡近くの灯台周りのヨットレースでのこと
アビーム（真横）からの風を受けて順調に第一ポイントを目指していた
梅雨の晴れ間のような清々しい陽気で絶好のコンディション
「順風満帆」
この日は久々に舵を任せてバラスト（重り）に徹していた
暇なのだ
景色を満喫していた
蒼い海に青い空
快調に波を切って走るヨット
モーターボートのようにエンジン音はない
風と波を切る音だけだ
右側から風を受けているので左に傾いている
それを抑えるために人間バラストが３人ほど
デッキの右端にハーネスを抱えて足を外に出し腰を掛けている
どうやらこのままのタックで第一ポイントまで行きそうだ
何もすることが無いので眠くなりそうなのをこらえながら
ヨットの下の海を見ていた
海の底が一瞬黒くなった
思わず足を上げた
ヨットの大きさを超えるほどの大きな魚影だ
３人の内もう一人が気が付いて
「なんだこれは！」
と叫んだ
海の底には何があるか分からない
「板一枚下は地獄」
とか言ってた人がいたが
今までの爽快さは吹っ飛んでしまった
後々のニュースで分ったことだが
漁師がサメに襲われ片腕を失う重症を負った
近海に大きなホオジロザメが数尾回遊しているとのこと
自衛隊のヘリコプターからの魚影の映像も出ていた
「ジョーズ」いるんだ！
