『二月の勝者』発売されましたね。
2月7日といえば、まだ傷口も生々しい時期。
例え結果が満足いくものであったとしても、親側の心には何かしら緊張や反省や後悔の欠片が残っていて、このタイミングでの発売はかなり心を揺さぶられるのではないでしょうか。
だからといって、1月にこんなリアルな2月1日を見せつけられても恐怖が増すばかり。心を抉られるのは12月に発売されたリアルな小説だけで勘弁してくれ!かもしれません。
(リアルな小説は最後の最後の1か月で起こり得る最悪な事態を予測した「お母さん、暴走する塾の先生やお父さんを止めてあげてね」メッセージ本だと思っています)
で、このタイミングなのかな。
まず思ったのは、自分はもはや『二月の勝者』の中に住んでいる!ぐらいのテンションで読んでいるんだな、ということです。
妄想の中では、桜花ゼミナールの子と同じマンションに住んでいる、学年と性別が違う子を持つママ友という立ち位置で、部外者ゆえにママの悩みをランチで聞ける設定。
そして中学受験の本番という最終局面シーンに至っては、「わたしなら、こうする」「わたしなら、こうはしない」という自分の判断だけで架空の物語をジャッジしてしまうという、かなり危ない入り込み方をしていることも実感しました。
さて、ここからは、ネタバレを含みます。
いや、含むどころかネタバレでしかありません。
そして前述の「わたしだったら、どうする」の独断と偏見まみれな感想になります。
既に新刊を読まれている方、読むつもりがないけど先が知りたい方、読んでないけどネタバレOKな方な方はどうぞお進みください。
ただしそこはpicot独断と偏見の館なことを、くれぐれもご承知いただきますよう、お願いいたします。
*** The ネタバレコーナー ***
気になったポイント。
(1)「合格率80%」を過信しすぎてる?
山本佳苗ちゃんが鈴蘭を1回目で落としていて、その理由は「書き込む解答欄を間違えている」という結論でしたが、そんな理由がなくても、いわゆる持ち偏差値と同じぐらいの適正校は普通に落ちることがあると思う。
周囲を見ての肌感覚でも感じるし、娘も1月校しょっぱなで落として「初戦で適正校は無謀だった」と後悔した覚えがあります。
そんな時、塾の先生が「合格率80%近辺の偏差値なら、1回で受からなくて当たり前と思ってください。志望した学校は何度も何度も受かるまで受けるのが中学受験です」と言われて深く納得。
いろいろな考えの先生がいらっしゃるとは思いますが、娘の担任の先生はそういう考えでしたし、わたしもその言葉を信じて、熱望校はまとめて最初に全ての回を申し込みました。
なので、合格率80%の学校は、佳苗ちゃん曰くの「すごいつまんないミス」でもしない限りは落ちないのかと、今から受験の親御さんが信じてしまったら可哀想だな、と、ここが気になりました。
(2)ごめんね、武田くんが泣いているのは自分のせいだと思うのよ。
確かにお母さんが自分の立場に照らし合わせて、やる気がない息子に中学受験を勧めたという背景があったとしても、さすがに武田くんは勉強しなさすぎ。うちの娘かと思いました。
娘も「わたしだって最後の20日間は勉強した!」と言い張っていますが、「過去問と銀本をやったの間違えでしょう」と言い返すと「それを言わないでー」と爆笑しています。やらない子は本当に12月までサボり続けるし、いまの娘曰く「実はSAPIXの小5までの知識を組み合わせて解いてた」と言っていました。
人生には必ず勝負の日があって、その日までに準備する機会があったにも関わらず、していなかったらそれ相応の目にはあうのだと、小学生の時点で教えておきたくて、うちは「お母さんのせい」と言ったことは1回もありませんでした。
戦略も最後は「ここに行きたい」という適正な学校が出てきたため、「充分、可能性はある学校だけど、最後の1日まで学力は伸びると黒木先生も言っているから皆んながもっと頑張ってくるよ。そうしたら今の成績をキープしているだけでは受からないかもしれない」と言っていました。
中学受験、万が一のことがあったとしても、決して子どもは親の被害者ではないと思うのです。(適正な学校を受けさせない家庭以外は ex.今川家)
かと言って勉強しなかった子どもの自業自得と言いたいわけではなく、失敗そのものに、今から長く長く続く人生における学びがあればいいかなーと、そんな風に考えています。
(3)大内ママ、いつのまに女子校志望に?
そもそも10巻で首都圏模試47.3の佳苗ちゃんが80%出しているカトレア女子学園を、あの合格率20%に特攻させようとしていた大内ママが受けさせているという、そのキャラクターの振れ幅がすごい。大内ママが0 or 100な人なのかもしれない。
ただ10巻によると、その20%特攻の先は、法陽大付属中、中庸大付属中希望だったので、GMARCH付属中希望だったはず。
礼央ちゃんが行きがかり上、「男性が苦手」設定を作ってしまったので、女子校に鞍替えしたのかな。
佐倉先生が山を張って向かった芍薬はカトレアより上という設定なのかな?芍薬は第3希望って書いてあるから、カトレア取ってたらもう受けなくてもよくないかしら。女子校なら、カトレアより上ということで米花・川横・帝都女学館・中立・中夫など名前をもじった実在校にチャレンジさせても良さそう。共学のままなら、明知学院中もどう?なんて大内ママにプレゼンしたくなりました。
(4)それ、睡眠不足の顔だから!
鉄オタの加藤くん!
加藤くん本人が1日目不合格だったのでほかの学校を受けたいと言っているならともかく、ちゃんと2回目も受けると言っているのに、夜遅くに呼び出して23時過ぎまで塾にとどめておくなんて、睡眠ありきの受験だったわたしとしては看過できません。
黒木先生が「何かを得るためには何かを失わなければならない」と、加藤くんの「代えがたい輝きを持つ瑞々しい少年らしさ」を摘んだ説明をするのですが、そもそも「合格を得るために、最も好きな電車を楽しむ自由時間を失いながら自習室に居た」わけで、それで等価交換は充分すぎるほどに充分ではないのか、と思うのです。
で、あれは少年らしい瑞々しさを失った顔ではなく、昨晩の睡眠時間を削られた顔なので、そこのところはよろしくと言いたい。
が!娘を育てていて思うのは、どんなに直そうとしても形状記憶合金のように元に戻るので、加藤くんの瑞々しさもきっと戻ってくると希望。
と、「自分だったら」というn=1な発想で感想を書いてみました。
その子、その親、そのご家庭の受験があるように、桜花ゼミナールの受験もあるのでしょう。
これだけ書けるということは、それだけ夢中にさせてくれているコンテンツということで、お許しください。
