プラネタリウムのふたご (講談社文庫)/講談社

¥792
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明確な悩みがある人、そういうのはないけれど漠然とした不安がある人、世の中にはきっと悩んでいない人なんていないんじゃないでしょうか。かくいう私も毎日何かに悩み、不安に思い、このままでいいのかと焦り、結局何も出来ない日を送ることが多いです。
そんなときに友人にこの本を薦めてもらいました。いしいしんじさんの『プラネタリウムのふたご』です。いしいしんじさんの本は『トリツカレ男』をむかーしに読みました。大人の童話、すこし説教くさい話?を書く人なんだな~と言う印象でした。自分には縁がない人だなと思っていました。
でも、今回。本当に読んでよかった。読む時期も、きっとよかったのだと思います。
お話は、とある田舎町のプラネタリウムに銀色の髪をした双子が捨てられていたところから始まります。双子はいつも泣いているような顔をしている泣き男の元で、星空の神話を聞かされて育てられます。ある日、あるサーカスの一座が村にやってきていつも一緒だった双子は別々の人生を送利はじめることになります。
手品の才能を開花させ、喝采を浴びるテンペル。
田舎町で毎日プラネタリウムの公演をし、郵便屋として働くタットル。
二人はまったく別々の人生を歩みながら、さまざまな人に出会い、さまざまな出来事を体験していきます。たった一人の友人である犬を失った兄貴の話、山の伝統である熊狩りのために熊に化けるタットル、自分宛に手紙を出し続けていた老女、手癖の悪い栓抜き。
愚かに見えるのに、それを自覚している登場人物たちが、管理人にはとても強かに見えました。きっと人によって胸を打たれるエピソードは違うのではないでしょうか。きっと10年後、この本を読んだら抱く感想はまた違うのでしょう。
私は女だからなのかどうかはわかりませんが、老女の話が一番心に残っています。老女は忘れられた存在です、くだらない存在です、弱い存在です。実際はそうではないのですが、その人の価値は誰かが認めないとないも同然なんです。しかし彼女もそれは自覚していて、なお自分に出来ることを精一杯しなさい、与えられたことをやりなさいと淡々と生きているのです。
私は毎日自分ではくだらないなーと思う仕事をしたり、これに意味があるのかなぁと思うようなことをして自分って駄目だなと思うことが最近多かったのですが「自分にできることくらい、しっかりやらなくてどうするの」と本当のおばあちゃんに言われたような気がしました。
さて、物語の最後で双子に大きな別れが訪れます。テンペルは自分に与えられた手品の才能を惜しみなく発揮し、別れの悲しみの中で今度こそタットルは自分に出来ることをきっちりとやり遂げます。
理不尽で嫌なことは誰の身にも起こりうることですが、その中に一縷の光を見つける力をこの物語は与えてくれたような気がしました。そして、ほんの少しだけ自分の孤独を和らげてもらったような気がしました。
また読み返すのはきっと辛いとおもう。思うけれど、手元において何度も読みたい本でした。

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明確な悩みがある人、そういうのはないけれど漠然とした不安がある人、世の中にはきっと悩んでいない人なんていないんじゃないでしょうか。かくいう私も毎日何かに悩み、不安に思い、このままでいいのかと焦り、結局何も出来ない日を送ることが多いです。
そんなときに友人にこの本を薦めてもらいました。いしいしんじさんの『プラネタリウムのふたご』です。いしいしんじさんの本は『トリツカレ男』をむかーしに読みました。大人の童話、すこし説教くさい話?を書く人なんだな~と言う印象でした。自分には縁がない人だなと思っていました。
でも、今回。本当に読んでよかった。読む時期も、きっとよかったのだと思います。
お話は、とある田舎町のプラネタリウムに銀色の髪をした双子が捨てられていたところから始まります。双子はいつも泣いているような顔をしている泣き男の元で、星空の神話を聞かされて育てられます。ある日、あるサーカスの一座が村にやってきていつも一緒だった双子は別々の人生を送利はじめることになります。
手品の才能を開花させ、喝采を浴びるテンペル。
田舎町で毎日プラネタリウムの公演をし、郵便屋として働くタットル。
二人はまったく別々の人生を歩みながら、さまざまな人に出会い、さまざまな出来事を体験していきます。たった一人の友人である犬を失った兄貴の話、山の伝統である熊狩りのために熊に化けるタットル、自分宛に手紙を出し続けていた老女、手癖の悪い栓抜き。
愚かに見えるのに、それを自覚している登場人物たちが、管理人にはとても強かに見えました。きっと人によって胸を打たれるエピソードは違うのではないでしょうか。きっと10年後、この本を読んだら抱く感想はまた違うのでしょう。
私は女だからなのかどうかはわかりませんが、老女の話が一番心に残っています。老女は忘れられた存在です、くだらない存在です、弱い存在です。実際はそうではないのですが、その人の価値は誰かが認めないとないも同然なんです。しかし彼女もそれは自覚していて、なお自分に出来ることを精一杯しなさい、与えられたことをやりなさいと淡々と生きているのです。
私は毎日自分ではくだらないなーと思う仕事をしたり、これに意味があるのかなぁと思うようなことをして自分って駄目だなと思うことが最近多かったのですが「自分にできることくらい、しっかりやらなくてどうするの」と本当のおばあちゃんに言われたような気がしました。
さて、物語の最後で双子に大きな別れが訪れます。テンペルは自分に与えられた手品の才能を惜しみなく発揮し、別れの悲しみの中で今度こそタットルは自分に出来ることをきっちりとやり遂げます。
理不尽で嫌なことは誰の身にも起こりうることですが、その中に一縷の光を見つける力をこの物語は与えてくれたような気がしました。そして、ほんの少しだけ自分の孤独を和らげてもらったような気がしました。
また読み返すのはきっと辛いとおもう。思うけれど、手元において何度も読みたい本でした。