
ウェイク・ワン/著 、小竹由美子/訳
得意だったはずの化学の研究はうまくいかず、博士号取得はドロップアウト寸前。同棲中の彼からのプロポーズにも答えが出せず……。血のにじむ努力で移民してきた両親の期待に応えられない自分を持て余した、理系女のこじれた思いが行きつく先は――。PEN/ヘミングウェイ賞を受賞した中国系アメリカ人作家のデビュー作。
化学の博士号取得コースから脱落した中国系女性が、移民の苦労を重ねてきた両親にそれを打ち明けられず、今後の身の振り方も決まらず、容姿も頭脳も性格も申し分ない同棲中の白人の恋人から結婚を申し込まれても決心がつかず、何もかも宙ぶらりん状態で煩悶する日々が、暗喩的な科学の雑学を交えて一人称現在形で語られる。恋人エリック以外は名前が与えられず、直截で淡々とした語りなのだが、その行間にしばしば強い感情が滲む。ごく普通のアメリカ人として育った善良なエリックにとっての「当たり前」に語り手はいちいち躓き、自分や両親の来し方を振り返る。周囲の何気ない視線や言葉が、日々語り手に突き刺さってくる。そんな状況でもがきながらも先へ進む道が見えてきたところで、物語は終わる。
作者は南京市出身。両親と共にオーストラリアとカナダ経由で11歳の時にアメリカへ。ハーバード大学で化学の学士号及び公衆衛生の博士号を、ボストン大学で美術学修士号を取得。全米図書協会の2017年度「35歳未満の注目作家5人」のひとりに選ばれている。本書はアマゾン・スタジオが映画化を検討中とのこと。
アメリカに移民した子供たちの成長物語、
フランク・マッコートの『アンジェラの灰』では酔っ払いのアイルランド移民の貧しい物語。ニューヨークに生まれ、アイルランドのリムリックで少年時代を過ごした。父が出奔したため、彼は母と弟妹たちの面倒を見なくてはならなかった。その後アメリカに戻り、ホテルで働き、その後港湾労働者などを経験した後、軍隊に入り3年間南ドイツの米軍基地で働いた。軍隊勤務の間にタイピストとしての訓練を受け、兵役を終えた後は退役軍人支援法を利用してニューヨーク大学で学び、英語の教師となった。自らの子供時代の記憶を綴った物語『アンジェラの灰』でピューリッツァー賞とナショナルブックアウォードを受賞した
ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』『低地』では、インド人は数学者、理系大学へしかし、インドの香辛料と親世代の風習がついて回る。カルカッタ出身のベンガル人を両親に持ち、ロンドンで生まれて幼少時にアメリカへ渡った彼女自身の来歴に近しい、移民とその周辺の人々である。新天地の環境や文化や人間関係を受け入れ、そこに順応しようと試行錯誤を繰り返しながら、けっして容易ではないその道筋のあちこちで登場人物が直面する。イタリアへ留学してイタリア語で小説を書き。移民作家ではないと。いいたいみたいですね。
アリステア・マクラウド「彼方なる歌に耳を澄ませよ」
18世紀末、スコットランドからカナダ東端の島、ケープ・ブレトンへ渡った一家がいた。誇り高いハイランダー(スコットランド高地人)の気質を備えたキャラム・ルーア55歳と妻、12人の子供たち。故郷を捨て、途中で妻を亡くして辿り着いた新しい土地で、キャラム・ルーアは根を張って生きていく。
ウェイク・ワンなスマホ世代ですのでこれから新しいアジア系アメリカ人の物語を紡ぎだしていくかたのしみです。