サハリン島』北朝鮮核ミサイル暴発後サハリン島旅する未来学者は何を見たか? | ・・・   旅と映画とB級グルメ と ちょっと本 のブログ

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エドゥアルド・ヴェルキン著
北川 和美 訳
毛利 公美 訳


物語は、サハリン島の調査にやってきた一人の女性未来学者のシレーニを中心として展開していく。島に3箇所ある刑務所を回ったり、官僚や軍人、徒刑囚、経済や社会分野を描写することが彼女の役割だ。その過程で未来学とは何なのか、彼女の(未来学の観点からみた)真の目的、さらにはサハリン島で起こるカタストロフに巻き込まれていくわけだが、あくまでも彼女と本書の中心的な目的は、このサハリン島という特異な場所、世界を描き出していく点にある。
サハリン島とはこの世界ではどのような役割を背負わされているのかといえば、先にも書いたように大陸と日本の間の緩衝地帯で、狂った土地だ。『サハリンは緩衝地帯にすぎません。その役割はかなり単純です。帝国社会の望ましからぬ輩の受け皿になっているのです。殺人者、強盗、変態、精神異常者、その他の悪人など少数であっても社会を破壊しうる者たちの。その一方で、サハリンは戦争後大陸から逃げてきた者全員を受け入れ、今も受け入れています。簡単に言えばここは巨大な……』
「サハリンは残りの世界に恩恵をもたらすが、地元住民にとっては地獄だと言えるでしょう。島は迫りくる混沌の力を押しとどめる最終防御線で、我々は悪と戦う真昼の防衛隊のようなものなんです……」
とは知事の弁。実際、この言葉通りにサハリン島及び北方領土周辺ではトンデモなことが起こり、普通ではない価値観がまかり通っている。娯楽は少なく、人々は娯楽を求めて毎月6日と9日には、用意されたニグロを集団で物を投げつけて殺そうとするニグロぶちのめしという遊びにふけっている(ラテンアメリカ人がニグロと呼ばれていたり、もはや元の意味は失われてしまっている)。ニグロは殺されすぎて数が減っており、死ぬのは歓迎されないが、別の場所ではわざわざ繁殖させていたりもする。
中国人とコリアンに対する激しい差別。帝国と化し天皇の意向が絶対視されるあらたな大日本帝国。イカれた登場人物たちによって語られる、未来論、ポストアポカリプス論、空と大地を繋ぐ〈糸〉の話。めちゃくちゃになった初期のサハリン島に秩序をもたらした、自治グループである、〈手押し車族〉と〈銛族〉。さらに、〈銛族〉と対立している、徒刑囚が刑期を終えて自由になった後に徒党を組み始めたことで出来た〈バケツ族〉(囚人は罰として罪に応じた鉛の入ったバケツがつけられているので)など、世界の奔流に身を任せているうちにあっというまに読み終わっていた。