『モスクワの伯爵』最高級のホテル、メトロポール屋根裏部屋に住む伯爵のソ連時代物語 | ・・・   旅と映画とB級グルメ と ちょっと本 のブログ

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エイモア・トールズ著 宇佐川晶子訳。

 1922年6月21日、アレクサンドル・イリイチ・ロストフ伯爵は、人民委員会議の緊急委員会に出席した。裁判官はこう告げた。「当委員会はきみがいたく好んでいるホテルへ返すこととする。しかし、勘違いをしてはならない。ふたたびメトロポールの外へ出れば銃殺刑が待っている」

 伯爵は幾代も続いた貴族で、14人の使用人、20室ある邸宅で育った。18年にパリから戻ってからは、モスクワで最高級のホテル、メトロポールのスイートルームで、贅を凝らした家具に囲まれて暮らしてきたが、革命は貴族たちのよりどころを奪っていた。伯爵はホテルの狭小な屋根裏部屋で、32年にわたる軟禁生活を送ることになる。だが、物語は決して陰気にも暗くもならない。伯爵は、洗練された趣味、優雅な礼節、高い教養と、「めげない、あきらめない、ふさぎこまない」神経の持ち主だ。ホテルの空気を作る人となり、最後は給仕長になる。日々の生活空間は限られているのに、寝起きにコーヒーを飲む、レストランで食事をする、バーで飲む、狭いはずの空間が生き生きと広がる。「職業は?」「紳士は職業を持ちません」「どのように時間を過ごしている?」「食事、議論。読書や考察。当たり前のよしなしごとですよ」。軟禁を言い渡された折、検察官に答えた伯爵の言葉が誰をも魅了する人柄を表している。
 そもそも幽閉とはいえ、モスクワ随一の豪奢(ごうしゃ)なホテル・メトロポールの中にさえいれば何をしても構わなかったので、主人公のロストフ伯爵は、旧友と会い、有名女優と恋をし、アメリカ人外交官と親交を結び、愛娘(まなむすめ)をピアニストに育てあげることができた。高級西洋料理やワインの良し悪(あ)しを知り尽くしている伯爵は、自分自身もホテル内のレストランで食事をすれば、洗練された給仕長としても采配を振るう。なんとも上品で知的でチャーミングな「紳士」でい続けられたのである。
 1954年、娘のように育てた女性が、ピアニストとしてパリでデビューする。来てくれるなら、という言葉に応え、有能なスパイのような行動でホテルを脱出する。
 背景には、プーシキンをきっかけにロシア文化が爆発した19世紀末、革命が帝政ロシアを根底から破壊した20世紀初頭という時代がある。米国でベストセラーとなった本書は、そんな時代に生き、誰もが魅せられてしまうロシアの伯爵を描き切っている。著者は大変なストーリー・テラーである。宇佐川晶子訳。
革命後のモスクワには、西欧の文化や考え方を直に接してきた文化人が外へ逃げたり粛清された為に、ロストフ伯爵に共産党の幹部が直に教えを乞うことになるのが面白い。
時代はスターリンからニキータ・フルシチョフへと変わるときに物語も娘がパリへそして伯爵は・・・・・・。
これは、明るい、希望に充ちたロシア人の粘り強さの物語。

ソ連時代はホテルでもジョージアワインが多くのまれているみたいでした。