
『西欧の東』
ミロスラフ・ペンコフ 著 藤井 光 訳
8作品からなる短編集。その中のひとつに題名にもなっている「西欧の東」があり、O・ヘンリー賞に選ばれている。冷戦時代の話だ。ブルガリアの村が分断され、小さな川が国境となり、西側が西欧圏のセルビアの領土となる。少年ハナは東側に、少女ヴェラは西側に住んでいる。子供の頃、ヴェラに殴られて鼻をつぶされたことから少年はハナと呼ばれるようになった。共産圏に住むハナはヴェラが身につけているジーンズがうらやましくて仕方がない。対岸にいるヴェラに呼びかけてジーンズを買ってもらう。ヴェラは強制的にセルビア人にされたことを悲しんでいる。ハナにはそれがわかった。2人は、国境警備員に見つからないように泳いで、川に沈んでいる教会で会う。何度も会う。流れの中で2人は十字架につかまって話す。
「わたしのこと愛してる?」とヴェラは訊(き)いた。「愛してるよ」とぼくは言った。「もう川から出たくないくらいだ」「バカね」と彼女はいうとぼくにキスをした。「人間は川じゃ生きられないわよ」
国境にフェンスが張られ、2人は会えなくなる。そして大人になる。「お願いだから来て」とヴェラからの手紙が届く。両親の面倒をみているハナはすぐには行けない。何年か経(た)ち、自分を縛りつけるものがなくなり、ハナは国境を越えて会いに行く。すると、ヴェラは…。
著者のペンコフはブルガリア人で、アメリカに移住して英語で小説を書いている。だからだろう、一文が短く、ポキポキと折れるような文体だ。それが少年の心の表現にぴったりと合っている。
「マケドニア」
1969年、脳こうそくで倒れた妻とともに介護施設に入居する71歳の主人公は結婚前に妻が受け取った恋文を偶然に発見する。そこには1905年にオスマン・トルコ打倒を目指して義勇軍に加わった恋人の体験が綴られていた。
ブルガリあの歴史と言えばトルコに支配された時代の話は定番ですね。
「レーニン買います」
舞台は21世紀。ブルガリアからアメリカに留学した語り手と、未だに共産主義の理想を信じる祖父。孫が引きこもり気味になったある日、祖父との電話での会話がはじまる。祖父は祖国で理想を実現すべく、共産主義の村をひそかに創設していた。
本当に共産主義の理想はあるのか?
東欧の国ブルガリアは数学オリンピックで優秀な成績の国の一つである。そんなブルガリアの天才少年の挫折を描いたのが「十字架泥棒」
西欧の東 ソフィア まずブルガリアのキリル文字がある。主教もブルガリア正教(東のイメージ)トルコに支配された歴史が長い。川の対岸のチトー時代の旧ユーゴスラヴィアのセルビアは東ヨーロッパ諸国を衛星国として取り込もうとしていたソ連と対立した。ソ連と対立したため、東ヨーロッパの軍事同盟であるワルシャワ条約機構に加盟せずこの時代の話だ。セルビアでは、本物のジーンズが手に入ったのだ。西欧の東にイメージにぴったりの国はブルガリアだろうね。
旅の思い出でソフィアのマクドナルドでは、ヨーグルトが販売されていて、ブルガリアヨーグルトの国だと思ったね。ソフィアでは、ホームステイで2週間滞在してた。のんびりした町でした。