2015年に読んだ本 ⑤から⑦ ベスト14 | ・・・   旅と映画とB級グルメ と ちょっと本 のブログ

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⑤『子供時代』リュドミラ・ウリツカヤ/著 ウラジーミル・リュバロフ/絵 沼野恭子/訳
 

中庭のあるアパートに住む子供たちが出会った奇跡。六つの物語からなる大人のための絵本。遠縁のおばあさんに引き取られた、けなげな孤児の姉妹の話…「キャベツの奇跡」、ほとんど目が見えない時計職人の曾祖父が、孫娘にしてやったこと…「つぶやきおじいさん」、いじめられっこのゲーニャのために母がひらいた誕生会で起きた思いがけない出来事…「折り紙の勝利」等六篇。静かな奇跡に満ちた、心揺さぶられる物語集。 本の帯の紹介より

祖母と母と暮らす少年ゲーニャは、病弱で友達もいない。母が心配して、誕生会を計画するが、ゲーニャはやってほしくない。緊張する誕生会の当日、ゲーニャの特技である折り紙が、小さな、しかし強い力を発揮する。

誕生会で

「じゃ、ファンと遊びをしましょう」と母がいった。

だれもこのゲームを知らなかった。

母がルールを説明した。(めいめいが自分の持ち物からひとつ賭けるものを提供し、「課題」をこなしてそれを取り戻すゲーム)

だれも賭けるも(ファント)のを持っていなかった。

アイティルは折り紙の帆船をテーブルの上に置いて言った。

「これ、おれのファントにする」

ゲーニャは帆船を自分のほうに引き寄せるとさっと手を加えて完成させた。

「ゲーニャ、女の子たちにファントをつくってあげたら」と母が言い、テーブルの新聞紙と厚紙を置いた。ゲーニャは厚紙を一枚手に取り、一瞬考えて縦に折った。

 男の子たちの坊主頭と、三つ編みをぎゅっと結わえた女の子たちの頭がテーブルの上に屈みこんでいる。ボート、船、帆のついた船、コップ、塩入れ、パンかご、シャツ・・・。

ゲーニャが仕上げのするやいなや、待ちきれない様子で手が完成品をとっさに取っていく。

「ぼくにも!ぼくにも作って!」

「もう作ってもらったじゃない、図々しい!次は私の番!」

「ゲーニャ、ぼくにはコップ」

「私は人!ゲーニャ、人作って!」

みんなファントだということも忘れている。ゲーニャは素早い手つきで折っては折り目を伸ばし、また折っては角を作っている。人、シャツ、犬・・・・・。

 子供たちはゲーニャの方へ手を伸ばし、ゲーニャは紙でできた素晴らしい作品を配ってやる。みんなが微笑み、ゲーニャにありがとうと言った。(中略)

  こんな気持ちは夢の中でしか感じたことがない。ゲーニャは幸せだった。恐怖も、敵意も、恨みも感じない。ゲーニャは他の子たちに何も劣っていなかった。むしろ優れているくらいだ。自分では何の意味もないと思っていたささやかな才能に、みんなが夢中になっているのだ。ゲーニャはまるで初めて見るように彼らの顔を見た。悪い顔じゃない。ぜんぜん意地悪そうな顔ではなかった。

 

中庭のあるアパートに住んでいる子供たちが出会った奇跡。「1949年のモスクワらしき町に暮らす子供たちの日常。」

 

 

⑥『風の丘』南イタリアの風の吹く丘で暮らす家族の物語 カルミネ・アバーテ、関口英子/訳

  

イタリア南部カラブリア地方にあるとされる架空の丘ロッサルコ、そこでは春になると無数の赤い花が咲き、秋になれば果樹や作物が豊かに実る。種々の植物や海、太陽などが織りなす芳しい風が吹く丘と、丘を所有するアルクーリ家の人々は深く結びついている。丘の上で繰り広げられる新たな命の誕生や出会い、収穫の喜び……一方で、丘には不穏で暗い秘密、流血の過去もまた閉じ込められている。そこで何が起ころうとも丘に吹く風は爽やかで甘い。同じように、この小説の文体はどんな悲劇を語るときも平易で軽々としている。読んでいると自分も丘を吹く風の中にいるような気がしてくる。

 語り手はアルクーリ家の若者リーノ、故郷を離れ教師をしている彼は、休暇中に父ミケランジェロとロッサルコの丘で過ごしていた。そこで突然父が彼に「よきにつけ悪しきにつけロッサルコの丘と深く結ばれた俺たち家族の」物語を語り始める。「(前略)俺が死に、俺と一緒に家族の物語まで消えて失くなってしまう前に、お前は真実を知っておかねばならん。そしていつの日か、こんどはお前が自分の子どもたちにそれを語って聞かせるんだ。約束してくれるな?」

  ミケランジェロの祖父アルベルトから始まる物語、それは丘を守るため多くの犠牲を払い、喜びだけでなく悲しみも受け入れてきた、家族と土地の物語だった。丘を少しずつ手に入れ、岩だらけの土地を耕し人が羨むほどの豊穣の畑にしたアルベルト、第一次世界大戦や無実の罪での告発などの苦難に見舞われながらも丘と家族を守り続けたその息子アルトゥーロ、成績優秀で都会へ進学し教師の職を手にしかけた時に第二次世界大戦に巻き込まれたミケランジェロ。香り立つ丘を愛する彼らには多くの敵が近づいてくる。地主ドン・リコ、力を増すファシスト、風光明媚さに目をつけたリゾート開発会社、風を「無色透明の黄金」と呼び発電用風車を建てようとする人々……お題目こそ時代によって変化するが、甘言で近づき牙を剥く手口は変わらない。一家は嫌がらせを受け流刑の憂き目、血みどろの報復にさえあうが、それでも丘に固執する。全く別の方向から丘にやってくる人々もいる。考古学者パオロ・オルシやウンベルト・ザノッティ=ビアンコ、彼らは丘に古代都市クリミサが眠っていると信じ、発掘調査を始める。期待と不安を感じつつ一家は発掘を見守る。戦争や事件のため何度も中断する発掘は、丘に思いもよらぬ結果をもたらす。

南イタリアにある暗い暴力世界で生活のしなければいけない人々の悲しみ。カラブリアの犯罪組織「ンドランゲタ(Ndrangheta」が支配しているに風の丘はある。

南イタリアやシチリアの映画で犯罪組織に狙われたらそれを逃れることができない場面が描かれることも多いね。 

 

現在のイタリアは古代の歴史の上に現在の生活がある。この本の舞台のカラブリア地方架空の丘ロッサルコ、そこでは春になると無数の赤い花が咲き、秋になれば果樹や作物が豊かに実る。種々の植物や海、太陽などが織りなす芳しい風が吹く丘を訪ねてみたくなるよね.

今年 旅に持っていくならこの本で決まりだね。

 

 

⑦『柑橘類と文明』  柑橘類と文明 マフィアを生んだシチリアレモンから、ヘレナ・アトレー/著 三木直子/訳 

レモンの香り/ 第1章 奇妙な果実―ルネッサンス時代のトスカーナ州の柑橘類コレクターたち/ 第2章 黄金の林檎―分類学の大混乱/ 第3章 ヨーロッパで一番の日当たり―「恋人たちの青白い顔のような」シチリア島のレモン/ 第4章 黄金の鉢いっぱいの苦いレモン―シチリア島西海岸のとてつもない富/ 第5章 夕日に染まるオレンジ―エトナ山の陰にブラッド・オレンジあり/ 第6章 出来の悪い子―甘やかされたリグーリアのキノット/ 第7章 頑なな狂気―ガルダ湖畔のリモナイア/ 第8章 緑の黄金―カラブリアと、世界一高価な柑橘類/ 第9章 比類なき収穫―リヴィエラ・デイ・チェドリで/ 巻末付録 柑橘類を知る情報ノート

 

シチリア島のレモン 

レモン栽培の流行は、レモンの果汁、またはアグロと呼ばれる苦い濃縮液が壊血病の予防及び治療に使えるということを英国海軍が認めたことではじまった。

柑橘類の生み出した好景気は、英国海軍へのレモンの供給に始まり、20世紀初頭まで続いた。だがレモンやそのほかの柑橘果実の値は週ごとに大きく上下することがあり、柑橘類市場はほかと比べて非常に不安定だった。不安定さはリスクに繋がり、それが投機を助長する。柑橘類を売り買いするマフィアは、実がなる前に収穫物を買い上げることが多かった。やがて、果実の一部をまだ青いうちに摘みとらせるようになっていく。青い果実は、温度と湿度が低いところに保存されれば長持ちし、それによってマフィアは果実を出し控えして市場を品不足にして、値を吊り上げることができた。

マフィアは暴力で柑橘類産業を独占したが、美しい景観はそのための奇妙なな役回りを演じていたようだ。レモン園を囲む高い塀は、雇われた殺し屋が仕事をするのを隠す役割を果たした。 本文より 

壊血病→レモンで助かる→英国海軍がレモンを大量に購入→シシリアのレモン栽培する裕福な地主が柑橘産業を暴力の支配で独占したのばマフィアの始まりとこの本には書かれています。

緑の黄金―カラブリア 香水の原料

ベルガモット カラブリアで取れるベルガモットは葉はレモンのそれに似て大きくて艶があり、緑から黄色に熟す苦い果実は大きさも形もオレンジにいている。ベルガモットが貴重なのは、果皮のの表面のすぐ下の気孔にに蓄えられた精油のせいだ。18世紀の初めから、香水業界で定着剤としてもちいるのがこの精油の主要な、かつもっとも利益率の高い使い途である。香水にベルガモットの精油を加えると香が長持ちし、まるでオーケストラの指揮者のように他の要素を調和させるのだ。

本文より

 

  君知るや南の国

   レモンの木は花咲き くらき林の中に

  こがね色したる柑子は枝もたわわに実り

  青き晴れたる空より しづやかに風吹き

  ミルテの木はしづかに ラウレルの木は高く

  雲にそびえて立てる国や 彼方へ

  君とともに ゆかまし

イタリアを愛したゲーテの詩。

 

イブレアのオレンジ合戦の 始まり? レモンのデザートメニューや、トスカーナの17世紀にイタ

リアで蒐集された柑橘類が並べられた庭園・・・・。柑橘類をテーマにイタリアを旅して回る。旅行書でもあります。

 


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