『沈黙を破る者』
メヒティルト・ボルマン 著
亡き父が遺した書類に潜む忌まわしき記憶。ナチス支配下のドイツを舞台に展開する悲劇と、その真相を追う現代の物語が交錯し、意外な結末を迎える。ドイツ・ミステリ大賞第1位の傑作。
『沈黙を破る者』は、現代ドイツで死去したある老人の遺品をきっかけとして、封印された過去の因縁を探ってゆく話です。物語内の過去パートでは、オランダ国境に近いドイツの町が舞台とナチ暗黒時代を生きることになった仲良し青年6人組の運命の交錯、そして悲劇が描かれます。
ストーリー上のひとつの焦点は、その男女6人組のうちの1人がナチス親衛隊に入り、結果的に戦争犯罪を犯しまうところです。その直接的な原因が、仲良しメンバー内の愛憎のもつれだったりするのが大きなポイントですね。
そう、本書について、作品の文芸性やミステリ性以上に興味深く、価値を感じさせるのが、
ドイツ人のナチ加害者意識持ちながら生きるナチ世代とナチ加害者を親族に持つであろう2世3世の世代の人々はナチ加害者しての歴史をどのように受け止めているのかを考えされられる物語
これは名作といわれるベルンハルト・シュリンクの『朗読者』にも共通する特徴で、その核心は、いわゆるナチ的な非人道行為が、個人的な特殊事情によって誘発(あるいは促進)されるように描かれる、という点につきます。
実際にはそうではなく、つまり、本作のヴィルヘルムや『朗読者』のハンナみたいな葛藤や屈折を抱えることなく、淡々と悪の作業をこなしていたケースのほうがおそらく多くて、ハンナ・アーレントはそれを「悪の凡庸さ」と名づけて問題視したのだけれど。
しかし…否、だからこそ、『沈黙を破る者』はドイツで高評価、圧倒的な支持を受けたのだろうという気はします。親しい人が「ナチ」であったことに、できればドラマチックな根拠があってほしい。それはある意味、深層心理的な本音アクションいえます。まさに、自分でかさぶたを剥がす微妙な感触を極大化させたものといえるでしょう。
日本の読者が本書に深く共感するとしたら、それはひょっとして、ドイツ人(またはドイツ社会)と、何らかの意味で内的な問題意識が共通していることを意味するのかもしれません。
この物語の主人公の秘密を握る父の出身地がベルンハルト・シュリンクの『帰郷者』と母親と同じようにシロンスク地方ヴロツワ出身いう話がでてきます。 第二次大戦前にドイツの都市で戦後はポーランド領になっていますので、戸籍などの秘密を隠す時必ずこの地方の出身者として物語に登場してきます。
日本人の戦争犯罪場所が国内でなく海外であったことに起因するのか、加害者としての知識が乏しいのではないでしょうか。737部隊のよう事件にしても・・・。忘れていまいたい過去を持つ。 敗戦国としての歴史を持つドイツと日本では読まれに共通の感じ方があるのかもしれませんね。
この地方は平たんで ドイツ 現在もサイクリストの聖地 自転車の専用道路があります。
物語の 本文より 「自転車で六人一緒にクレーフェの学校まで一二キロの道をを通うようになって、もう何年もたっていた。」
