坊主小咄…おはなし 増補版 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

※以前の記事にいくつかの小咄を加筆して投稿させて頂きます。

 

 

              おはなし

 

 

砂漠の国の王様が
一人の女に言いました。
毎晩おはなししてください。
おはなしなしでは生きられない。


      ※


朝は足なし、昼は二本足、夜は消えてしまうもの、なーんだ。
水中の暮らしを捨てて人となり、
王子との恋に破れて昇天した人魚の姫を悼み、
スフィンクスは道行く人に謎をかける。

 

      ※

 

鏡よ、鏡、

この世でいちばん美しいのは、

おまえだ。

 

      ※


屏風の虎を召し捕れと言われた小僧はやおら縄を振り回し、
召し捕ってみせますから誰か虎を追い出して下さい、
早く早く、と言ったものの、
周りの大人は白い目で、
それが出来れば苦労はないわ、
つべこべ言わずにさっさと召し捕れとけしかけたものだから、
早く早くの声も今はかすれて、
小僧はただ、赤面するばかり。

 

      ※

 

手袋を買うために小銭を持つ手を出し間違えても

人間は自分を捕えなかった、

だから人間はいいものだよと教えてあげた母親も今は亡く、

そして今や子狐は人間との心の行き違いで胸を撃たれて倒れている。

瀕死の子狐の脳裡に母親の疑問が去来する。

人間は本当にいいものなのか?

 

      ※

 

人間社会と決別した少年は、

三匹の動物だけを友として、

人間のいない島へと移住した。

腰にきび団子をぶら下げて。   
 


      ※


私があの時、少し悲しい顔をした理由は、
悪人が再び地獄に落ちた、
その罪と罰を思ったからではなくて、
仏と呼ばれる身でありながら、
彼の心を試すように蜘蛛の糸を垂らした自分の心を、
悲しく思ったからなのです。

 

      ※


さあ、猿よ、
この世の果てにたどり着けたら、
お前を自由にしてやろうと言って、
仏は自分の指をこの世の果ての柱と見せかけて、
猿の行く手を遮った。
猿は仏の指に、

 

   己が手の 猿捨てきれぬ 仏かな
 
と書き付けると、たちまち姿をくらました。

 

 

        おしまい

 

 

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プッタタート比丘の瞑想手引書「観息正念」を添付してあります。

是非ご覧ください。