奇術家にしてミステリ作家でもある泡坂妻夫師が作家デビュー以前に本名の厚川昌男名義で著した奇術書の「四角な鞄」を、このところ泡坂師の奇術に関する小説と随筆を順々に読み返していた勢いで、久し振りに読んでみることにした。
出家するよりも前、若かりし頃の私が泡坂師にファンレターを出し、お返事と共に署名入りで寄贈して頂いたこの書物、物語風な構成が後々に書かれた探偵小説に比べてちょっとぎこちない気もするけれど、泡坂師にしか生み出せない奇矯な着想の数々もさることながら、それを生み出すための「偏屈精神」について繰り返し繰り返し述べておられていることに、改めて感銘を受けた。
おしまい。
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