「ターベルコース・イン・マジック」の思い出 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

何度も書かせて頂いているのだが、子供の頃にアメリカの奇術師ハーラン・ターベルによる奇術の百科全書「ターベルコース・イン・マジック」の日本語版が奇術用品店のテンヨーから刊行されるというチラシを見た時に、まさかこの世に1冊5500円もする手品の本があるとは思いもせず、全7巻の値段だと思い込み、5500円を7で割ってみて、それでも子供心には高いなあと感じたものだった。

 

そのターベルコースも何年か前に時代の流れが変わったという理由で遂に販売終了したそうなのだが、さて、お年玉を貯めて貯めてようやく買ったターベルコースの第1巻、周りの大人ですら随分高い本を買ったんだねなどと驚いていた記憶も懐かしいその本を久しぶりに開いてみたら、子供の頃の私が引いたアンダーラインがいくつも残っている。

 

例えばあるギミックを使った「塩の移動」、そのギミックは既に持っていたものの、それを使って顆粒状の物を消したり出したりするなんて考えもしなかった。学校の運動場の砂を掌の中で消して見せて同級生を不思議がらせたことなども思い出す。

 

また、私はカードの手品が嫌いだったにも関わらず、そこに解説されていたカード奇術の素晴らしさには随分魅了されたものだ。「心理学的不可能」や帽子の中から客のカードだけが飛び出す「はじき出せ!」、自分の持っているカードにちょっと仕掛けをするだけで驚くべき効果を生む「リフルフォース」、オレンジの中にカードを仕込む方法を教えてくれた「カードとオレンジ」などなどなど。

 

当時、コイン奇術が大好きだったのだけれど、ターベルコースの最初の方に載っている「ル・ポールのコインバニッシュ」という技法でコインを消して見せたら、今まで知っていた技法で演じた時の何倍も何十倍も相手が驚いてくれた。正にターベルが第1巻の最初の総論で述べている、「いずれあなたは自分が本当にコインを消すことができると信じられるようになるでしょう」という言葉そのままに。

 

ターベルコースの第2巻は買ったもののその後、手離してしまい、3巻以降は追々に図書館で借りて読んだ。第1巻だけはあの当時のまま手元にあり、時々ぱらぱらとめくってみては感慨に耽る。

 

                おしまい。

 

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