※各段落の頭文字を繋ぐと「てん・せ・い・の・ま」となるように工夫しました。
天啓シリーズを始めとする笠井潔氏の、矢吹駆シリーズ以外の小説を余り読んだことがないにも関わらず、今回、飛鳥井シリーズの長編である「転生の魔」を読んでみたのは他でもない。
先日、何十年も逃走中だった企業連続爆破事件の犯人の一人が病院で本名を明かしたというニュースを聞いて、笠井氏がこの事件のことを今までどう語って来たのかを検索してみたら、「転生の魔」のことが出て来たからだ。
今の時代の事件や事象と、企業連続爆破のような昭和の歴史的事件や文物を思想論争と共にふんだんに織り込み、ミステリとしてのプロットに絡めて描いた小説ということなので、同じく70年代のパリを舞台に哲学談義や思想論争が繰り広げられるミステリである、矢吹駆シリーズのような作品なのかと期待して読んだ。
残り僅かで全10作が完結する矢吹駆シリーズではあるが、インターネットのレビューを見る限り、最近の一般読者からは青臭い、理屈っぽい、哲学談義がくどい、ミステリ部分が弱いといった意見もあるそうで、大きな声では言えないが、そうした要素をこそ愛する笠井潔ファンでない読者には、それも当然の反応かも知れないと思ってみたりもする。
まだまだ現役作家として現時点ぎりぎりの実際の事件を盛り込んで作品世界を作り上げる笠井氏の手法は私にとってはとても楽しく、「転生の魔」もそこそこには面白かったのだけれど、さて、皆さまは如何?
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編」 などもご覧ください
※各段落の頭文字を繋ぐと「てん・せ・い・の・ま」となるように工夫しました。