お坊さんの片袖 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

幽霊が着物の片袖を残したという伝説が日本各地にあって、謡曲「善知鳥(うとう)」なども片袖伝説に基づく話だが、中でも大阪市平野区の大念仏寺に残されていて今も拝観可能な「幽霊の片袖」は取り分け有名で、大念仏寺のこの伝説は上方落語「片袖」のモチーフにもなっている。

 

子供の時に活字で落語の「片袖」を読んだ時は、オチの「騙る」という言葉の意味がよく分からずに歯がゆい思いをしたものだが、今思えばなかなかこれはよく出来た噺ではあった。

 

芝居などでも義兄弟の契りを交わすのに片袖を与え合う場面があったりするが、着物の袖というものは簡単に外すことが出来るので、何かとこうした物語のテーマになりやすかったのかも知れない。

 

さて、私がお坊さんとしてまだ駆け出しの頃、袖の短い略衣ではなく、わざわざ袖の長い法衣を着て自転車でどこかのお参りに行った時、何かに袖が引っ掛かっってしまったことがある。

 

危ない、衣が絡みついて転倒するかも知れないと思った瞬間、自転車は何事もなく走っており、あれ、おかしいな、なぜ無事だったのだろうと思って後ろを振り返ったら、引っ掛かった片袖が千切れてガードレールに絡みついていた。

 

こんな情けない経験があるものだから、芝居や伝説で、着物の袖を千切って取り外すという描写があっても、それが実際に簡単に行える行為であったことが、私にはよく分かる。

 

 

 

                おしまい。

 

「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。