子供の頃から探偵小説が好きで、創元推理文庫の目録をよく楽しみに読んだものだが、その中のSF部門のレイ・ブラッドベリの項で、「何かが道をやってくる」や「十月はたそがれの国」のあらすじを、興味深く何度も読んだものだ。
けれど、なぜか十代の頃に読んだブラッドベリ作品は古本屋で見つけた「スは宇宙(スペース)のス」と、友達が持っていた「とうに夜半を過ぎて」だけで、どちらも全く印象に残っていない。
ちなみに「R is for Rocket」を「ウは宇宙船のウ」と訳したがために、後に出した「S is for Space」を無理のある「宇宙(スペース)」といった訳し方にせざるを得なかったのだろう。最初に「ロはロケットのロ」としておけば、後は「ウは宇宙のウ」で良かっただろうにと、当時の私は思ったものだ。
さて、近頃、サーカスについて考えることがあり、サーカスをテーマにした物語にはどんなものがあるかと思った時に、結局今まで一度も読んだことがなかった「何かが道をやってくる」を、初めて読んでみることにした。
そして、その結果は、この世にブラッドベリのことを他の作家と一線を画する特別な作家だと思っている方がたくさんおられるのを承知の上で敢えて言うのだけれど、まったく面白くなかった。
十代の頃に読まずに今読んだから、こちらの感受性が枯れてしまったのだとは思わない。むしろ今読んだ方が昔読んだよりも面白く感じた本がたくさんある。
今までこの本に手が出なかったのは他でもない、昔から今に至るまで、結局私はSFやファンタジーよりも、ミステリの方が好きだったのだ。
おしまい。
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