創元推理文庫 新訳版「Yの悲劇」のこと | アジアのお坊さん 番外編

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※各段落の頭文字を繋ぐと「わ・い・の・ひ・げ・き」となるように工夫しました。

 

 

私だけに限ったことではないと思うが、「Yの悲劇」を初めて読んだのは中学生の時で、読む前から犯人を知っていたので、その印象はあまり良くなかった。

 

一番最初にそのトリックを知ったのは、江戸川乱歩の「探偵小説の謎」の中の「異様な犯罪動機」という章に犯人とプロットが簡潔に記されているのを小学生の頃に読んだ時で、その後もいろんなトリック本に、この作品の種明かしが載っているのを読んだ覚えがある。

 

後に悲劇シリーズ四部作の第1作「Xの悲劇」を読んだ時に、こちらは「Yの悲劇」と違って、いくつかのトリックをやはり「探偵小説の謎」で読んでいたものの、ラストの1行を含め、大いに衝撃を受けたものだ。

 

一昔くらい前からエラリー・クイーン作品の新訳が、創元推理文庫から何作も出ているので読んでみたのだが、今度は「Xの悲劇」も含めて少しも面白くない。訳が悪いのではなく、どうやら私はエラリー・クイーンという作家と肌が合わないらしいということに気が付いた。

 

現にこの「Yの悲劇」を何十年かぶりに読み直すまではそう思っていたのだが、それなのに、今回新訳版の「Yの悲劇」を読むと面白くてたまらなかった。

 

奇行奇癖に満ちた、正にその通称の如く奇人だらけのマッド・ハッター一家。子供の私には皆目わからなかったその描写こそが、「Yの悲劇」の魅力だったのだと、大人になってやっと分かった。

 

 

※各段落の頭文字を繋ぐと「わ・い・の・ひ・げ・き」となるように工夫しました。

 

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