精進料理で禁じられている臭いや精の強い植物を指す「五辛」もしくは「五葷」という言葉がある。
さて、ある方から生姜は五辛ではないのですかと聞かれ、どちらかと言えば生姜は精進料理に欠かせない食材ではないのかと思い、改めて調べてみると、資料によっては「五辛」に生姜が含まれる場合もあることが分かった。
以下に列挙してみる。
・wikipedia 「五辛」 ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、生姜
・wikipedia 「禁葷食」ニンニク、タマネギ、ネギ、ニラ、ラッキョウ
但し、どちらの項目にも経典、資料、宗派などによって異同や諸説があることが記されている。
・三省堂 大辞林 「五辛」の項を引くと「五葷」を見よとあり、「五葷」の項に、仏教ではニンニク、ヒル、ニラ、ネギ、ラッキョウ、道教ではニラ、オオニラ、ニンニク、アブラナ、コエンドコを指すとある。
・岩波 佛教語大辞典 ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ハジカミ
・誠信書房 新・佛教辞典 ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ハジカミ(生姜、山椒)
・大法輪閣 「精進料理入門」 ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、ハジカミ(生姜、山椒)
全般に言えることは、中国語の漢字で表された植物名が、必ずしも和訳と合っていない場合もあるのではないかということで、例えば本当は生姜ではない植物を指す漢字を「ハジカミ」であると解釈したために、それが即ち「生姜」や「山椒」のことであると理解された可能性はないのだろうか?
ちなみに台湾の星雲大師の「仏教の精進料理に対する考え方」では「五辛」は「ニラ、ネギ、ニンニク、ラッキョウ、アサツキ(エシャロット)」とされている。
インターネットで永平寺や禅寺の精進料理について書いた方の文章を見ると、「以前は五辛に生姜を含めることもありましたが、現在では精進料理に生姜を使っています」のような説明をされていることが多い。
果たして本当に昔はお寺で生姜が禁じられていたのだろうか? それとも上のような文献を見て、昔は生姜が五辛の一つとされて禁じられていたと間違って解釈しておられるだけなのか、誰か詳しい方のご教示を仰ぎたく思っている。
おしまい。
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編 アジアの精進料理」もご覧ください。