永平寺参拝の印象が良かったので、それに付随することばかり書いているけれど、永平寺の宿坊に泊まって翌日の朝課に随喜させて頂いて、さて、お寺の朝のお勤めを表す「朝課」という言葉、他にどんな言い方があるかなと考えてみた。
どちらかと言えば、自宗である天台宗以外のお寺も含む、今まで私がご縁のあったお寺でお勤めのことを呼ぶ場合、普通に「勤行」と言うことが多かった。
朝のお勤めは「朝の勤行」、夜のお勤めは「夜の勤行」で、それぞれ「朝勤」「夕勤」などと呼ぶ場合もあるが、もちろん「朝課」という言葉を使うこともあるにはあった。
「天台宗勤行儀」という、延暦寺が出しているけれど、どちらかと言えば一般在家の方のお勤めに使うことが多い薄手の経本には、「朝課」「晩課」と書いてある。
また、天台宗の僧侶が一定の修行を終えた後に受けるべき「経歴行階」と呼ばれる儀式がいくつかあって、その中の「登壇受戒(円頓大戒授戒会」の日程表を引っ張り出してみたら、「勤行」という表記になっていた。一方で同じ経歴行階の「伝法灌頂」の時の日程表では、朝のお勤めが「朝事」となっている。
「朝事」と呼ぶお寺としては、信州善光寺(天台宗・浄土宗)の「お朝事」が有名だが、「朝事」には丁寧語の「お」を付けることが多いためか、ちょっとお上品な感じがしなくもない言葉だ。
手元の英語辞書(「日英仏教辞典」大東出版社)を見ると、「朝課諷経」(ちょうかふぎん)という見出しがあって、その英語は「mornig chanting」となっている。「勤行」という見出し語の英語は、「regular chanting」だ。
因みに日本語の「佛教語大辞典」(東京書籍)には「朝事」「朝座」「晨朝」「夕座」「夕事」「勤行」などの見出し語が見えるが、「晩課」は見えない。
日本人比丘であるプラ・落合・マハ-プンニョ師の「テーラワーダ仏教の出家作法」には、「DAILY CHANTING」という章があり、「朝課」「夕課」という日本語が使われている。
私が持っているタイで発行された英文のパーリ勤行儀には「MORNING & EVENING CHANTING」という言葉が使われている。天台宗ニューヨーク別院の聞真・ポール・ネエモン師の英文による天台宗勤行儀「TENDAI BUDDHIST SERVICES」には、「Moring & Evening Service」という言葉が使われている。
「service」も「chanting」も勤行を表す仏教英語としてはお馴染みの単語だが、chanting という言葉には「読経」のニュアンスもあり、この2つは微妙に違う感じではある。ついでながら、「礼拝」を表す「worship」という言葉も、英文仏教書などでよく見かける言葉だ。
因みにタイ語で勤行を表す言葉には、「タムワッツ」「スワットモン」などがあり(タイ語表記は敢えて省きます)、それぞれに「朝」「夕」を表すタイ語の「チャウ」「イェン」を付けて、「タムワッツ・チャウ」「スワットモン・イェン」のように表現する。「タムワッツ」は「勤行」、「スワットモン」は「読経」のニュアンスだが、この辺りの事情については、私より詳しい方がたくさんおられるので、いずれ皆さまのご教示を仰ぎたく思っている。
おしまい。
※画像はタイ発行の英文のパーリ勤行儀です。
「ホームページ アジアのお坊さん本編 仏教語学」もご覧ください。