お寺様の話 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

先日、時々お手伝いに行くお寺の職員さんが、ちょっと丁重に扱うべき、仏教関係ではない、さる団体宛てに手紙を出すのに、名称の下には「御中」でなくて「様」を付けるべきかな? などと議論していた。
 
お寺からお寺へ手紙などを出す場合の宛て名には「御中」でなくて「様」を付けるという特殊な慣例があるが、相手がお寺さんでないのなら、普通どおり「御中」でなければならい。
 
さらに、そのお寺関係の何かの協会の会員全員にメールを送るのに、今度は反対に、「御中」で良いのだろうね? などと討論している。こういう時は、「各位」ではないのかなと思ったのだけれど、いずれもよそのお寺のことなので、知らぬ振りをして口をつぐんだ。
 
かく言う私も、お坊さんになって間もない頃、「○○寺内」の誰か宛てに名前を書く時は「○○寺 御内」と書くのだと聞いて、寺名だけの宛て名に「○○寺 御中」と書かず、「○○寺 御内」とだけ書いて送って、寺名だけなら「○○寺 様」と書くのだと叱られたことがある。
 
寺の住所の気付やお坊さんの肩書き・敬称も、御尊住やら猊下やら諸大徳やら、いろんな書き方があって難しい。書き慣れているお寺さんたちは、さらりさらりと達筆で、こうした言い回しをいとも自在に操って、楽々とハガキや手紙を下さるのには頭が下がるが、いずれにしても日本語の中で、お寺に対してだけが、相手が個人ではないにも関わらず、「様」を付けることになっていることには、仏法というものに対する敬意を始めとする、いろんな意味が込められていて、とても良い慣習だと私は思う。
 
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編 仏教語学」もご覧ください。