「哲学する心」というものは、とても大事だけれど、哲学という学問は、もはや必要ないのではないかと思うようになったのは、仏教がこの世の成り立ちを全て説き明かし、かつ自分が何をすれば良いかを明確に、科学的に教えてくれていることを、自分が知ったからだ。
ただ、この地球上で起こっている現象に対して、仏教的に、生物学的に、人類史的に、思想史的に哲学する心で立ち向かって行くのは大事なことだと思うから、昨今の新型コロナウイルスの流行に対して、そのような巨視的な見解を、もっとたくさんの人が発信してほしいと思う。
例えば、「第3のチンパンジー」などの著作で知られるジャレド・ダイアモンド博士に対するインタビューが2020年4月10日付の読売新聞に載っていたし、新進気鋭の哲学者マルクス・ガブリエル氏のコラムは、集英社新書のサイトに掲載されていた。
また、4月11日にはNHKの「ETV特集」において、「緊急対談 パンデミックが変える世界 ~海外の知性が語る展望~」として、「サピエンス全史」などで知られるユヴァル・ノア・ハラリ氏を始め、イアン・ブレマー氏、ジャック・アタリ氏へのインタビューが放映されたが、いずれも意義あることだと思う。
プラユキ・ナラテボー師は、既に2月26日付のツイッターで、「最近会った人が、コロナウイルスに感染する可能性あるので目や鼻を触らないようにと心がけてるけどついつい触ってしまい、気づきがない自分を思い知らされてると言っていた。巷の不安感に感染するよりは感染防止と気づきの瞑想の一石二鳥と捉え、心身共にヘルシーになる機会にしていきたいですね」と仰っておられたが、「タイ佛教修学記」管理人の伊藤氏も、「緊急事態宣言が出され、不安な世の中となりましたが、不安や心配に呑み込まれてしまわぬよう、心を整えて、育てていくことに努めてまいりたいと思います」というメールを、私に送信して下さった。
正に今の状況に対して、我ら仏教者は、社会的距離を取ることも含めて、気づき(sati)を保ち、気づきを高め、同時に地球的・哲学的な視野でこの状況に対峙して行くべきだと、私は思う。