※各段落の頭文字を繋ぐと「ふ・く・す・う」となるように工夫しました。
不評と聞くと読みたくなる偏屈な性格なので、クリスティーの「複数の時計」を読んでみた。
「クリスティー完全攻略」という例の本における「複数の時計」の評価が低かったので、却って興味をそそられて読んだのだが、「完全攻略」の著者である霜月蒼氏が貶めるところの、部屋に置かれた複数の時計の謎に関しては、チェスタトンの「ブラウン神父の醜聞」のある1篇を彷彿させて、私にはとても面白かった(ちなみに、霜月氏だけでなく、ジュリアン・シモンズなども「複数の時計」のこの部分に関して、苦言を呈している)。
数週間前に「ハロウィーン・パーティー」のレビューを書かせて頂いた時に、「後期クリスティー的問題」と銘打って、老齢のポアロと晩年のクリスティーの芸達者さは表裏一体だという私見を述べたのだが、この作品も同じ魅力に満ちていた。
上手い語り口とちりばめた伏線で、ワン・アイデアを卓越したプロットに仕立て上げる手法は中期から後期にかけてのクリスティーの独壇場で、この「複数の時計」もまた、やはり傑作の一つだと私は思う。
※各段落の頭文字を繋ぐと「ふ・く・す・う」となるように工夫しました。