桜田育夫「タイの象」のこと | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

何遍も書かせて頂いていることながら、1990年代にめこんから出版された書物には、本当に名著が多い。何度も書かせて頂いている筆頭は「バンコクの好奇心」(前川健一著)と「タイ仏教入門」(石井米雄著)なのだが、この「タイの象」(桜井育夫著)もやはり1990年代の出版で、その象に関する薀蓄の深さには、頭が下がる思いがする。

アジア象に関する生物学的な知識や、タイにおける象使いの村やトレーニングセンターについてといったタイの象に関するあらゆる情報が詰め込まれているが、特に仏教説話に関しては複雑多岐に渡るいろんな象の説話を詳しく説明してあって、タイのお寺でよく見かけるパーリライ象の伝説のことも、この本を読むととてもよく分かる。

もちろんタイの象と言えば外せないエラワン象のことも載っていて、昨今、改めて日本人にも人気のエラワン・ホテルのプラ・プロム祠に関する説明も、他の追随を許さない詳しさだ。

2000年代以降、日本人の旅行状況は変わり、バックパッカー全盛期とは違うジャンルの人たちがタイに興味を持つようになり、またその中で、タイの象と触れ合う旅行をする人も増えては来たが、是非、そういった方たちみんなに必須資料として、この「タイの象」を読んで頂きたいものだと、切に願う。

※「タイの象」によると、英語の「エレファント」という言葉は、「エラワン」から来ているそうです。ちなみにタイ語の「エラワン」はパーリ語の「エーラーヴァナ」の訛りです。

エーラーヴァナと名づける象王は、あなたが勝利者(ブッダ)であると聞いたので、あなたのもとに来ました。
ー「ブッダのことば スッタニパータ」379句(岩波文庫)79頁

イメージ 2

イメージ 1
イメージ 3

画像は上から順にタイのブッダ伝記漫画、ピサヌロークのワット・ヤイ寺院、台湾苗栗県の法雲寺のパーリライ象の写真です。


も是非ご覧ください。