西国札所の中山寺にエスカレーターが出来た時、私の周りでは賛否両論が聞かれたものだけれど、ミャンマーのシュエダゴン・パゴダにもエスカレーターがあることだし、少なくともエスカレーターの設置が日本的な発想だから、お参りにふさわしくないとの意見は当たらない。
ついでに言うと、エスカレーターだからお寺にあると突飛な感じがするけれど、例えばエレベーターのあるお寺なら、もはやそれほど珍しくもない訳で、付属の会館などでなく、本堂を初めとする、仏さまを祀る諸堂にエレベーターのある仏教寺院は、日本、アジア、内外を問わず、枚挙に暇がない。
参拝の労を助けるという意味ならば、ロープウエイで登れる山岳寺院もたくさんある。全てを徒歩で通すと決意している歩き遍路の方にとっては難所だと言われる四国札所の内のいくつかのお寺にも、歩いて登れない人のためのロープウエイがあるし、タイ・チェンマイのドイ・ステープ寺院にはケーブルカーがある。
インドの仏跡ラージギルにある霊鷲山には、日本山妙法寺が寄進した登山用リフトがあって、このリフトは停電のためにしばしば途中でよく止まるのだが、インド人スタッフ曰くに、ダライ・ラマが乗った時にも止まったよ、いつものことだから慌てなくてもいい、とのことだ。
さて、楽をせずに自分の足でしっかりとお参りすべきだ、という考え方もあるし、現に相当、苦労しなければたどり着けないお寺も、まだまだ多い。
けれど、物見遊山で楽して登りたいからではなく、本当の信仰心からお参りしたいのにも関わらず、物理的に、肉体的に、能力的に困難だ、という場合もある訳だから、決してリフト設備のあるお寺が、参拝というものの本義から外れているとは言い難い。
月並みな結論ではあるが、結局のところ、お参りをしようという真摯な気持ちがあるかないかが肝心で、その気持ちさえあるならば、どんな方法で寺にたどり着いたとしても、その参拝行為は仏法に適っていると言えるのではなかろう。
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