先日、葬儀場から衣を着たままタクシーに乗せて頂いたのですが、前方の交差点で前の車が一方通行を逆走したのを見たタクシーの運転手さんが、あ、あいつ、逆走しよった、向こうから車が走って来たらガシャーンと事故しよるでと、そこは関西でもなかなか庶民的な土地柄で知られる町だったこともあってか、そんな言い方で仰いました。
そして私に、何考えてるんでしょね、あれ、事故したいんかいな、みたいに同意を求めるので、ええ、ええ、でもね、我々は職業柄、事故しよるで、或いは事故してしまえばいいのにという風には、言ったり、思ったりしてはいけないもんで、事故したらあかんで、事故しないようにね、と思うようにするんですと、お答え致しました。
そうしたら運転手さんは、まあね、でも事故したら、ここにお坊さんが乗ってるから、すぐお経を上げてもらえたりなんかして、などとまだつまらん冗談を仰るので、ここでよく出来たお坊さまならば、あはは、面白いことを仰る運転手さんじゃ、だとか、反対にそういうことを仰るもんではありませんぞ、とか、或いは一緒に調子に乗ってブラックなつもりのつまらない冗談で返すとか、いろいろ方法はあるんでしょうけれども、いやいや、ああいう方に限って、うま~い具合に事故することもなく、向こうから車も来ず、下手をしたら自分が逆行したことにすら気がつかず、のほほ~んと切り抜けてしまうもんなんですよ、世の中というのは困ったもんで、とぬらくらお答え致しておきました。
さて、そこで運転手さんが納得して下さるのか、まだもっと何か言い返そうとされるかは分からないので、反応が返って来る前に、すかさず、でも一方通行の逆行ってよくありますよね、という話に持って行ったら、さすがにそこはプロの運転手、自分の経験談をいろいろ語り出し始め、まあ今はナビがあるからまだましだけれどもと仰るので、大変なお仕事ですねえ、そう言えば昔だったら聞いたこともない場所を言われても、うまいこと目的地まで自分の力で行かねばならなかった訳でしょう? 我々お客はタクシーだったら、場所さえ言えば連れて行って下さると思いますものねと申し上げました。
すると運転手さんが、いやいやそれにはやっぱりいろいろ工夫があってと仰るので、はあそうですか、う~ん、やっぱり大変なお仕事だ、ご苦労さまでございます、おや、もう着きましたか、有難うございますなどと言いながら、車を降りたことではありました。
そんなこんなで皆さまも危ない運転をされる車やバイクを見たら、事故のないように気をつけてねと、心中ひそかに思ってあげて下さい。きっとその瞬間に、善が発生しますから。
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