上座部仏教(テーラワーダ仏教)には227の戒律があって、上座部のお坊さんはその悉くを厳しく遵守して生活しておられる訳だが、さて、その中に食事に関する戒律がいくつかある。
音を立てて食べるな、他人の托鉢の鉢の中を羨ましそうに覗き込むな、などという条項の他に、「ご飯に丁度いい様におかずを受くべし」という戒律がある。
ちなみに上の日本語訳は日本人テーラワーダ出家の大先達である佐々木弘伝師の訳なのだが、佐々木師が「おかず」と訳しておられる箇所を、現役日本人上座部僧の落合隆師(プラ・タカシ・マハプンニョ師。タイのお寺に在住し、パーリ語の戒本や出家作法次第の日本語訳という、貴重な法務にも携わっておられる方)は、「スープに見合う量の施食を受けるべきである、と修学せよ」と訳されている。
そして、「スープ」に当たる部分は英訳では、curry(カレー)、broth(煮汁、肉汁)、タイ語訳では「ゲーン」と訳されていると、落合師は傍注で説明しておられる。
ちなみに「ゲーン」というのは日本語で「タイ・カレー」などと呼ばれる汁物料理のことで、グリーン・カレーなどもこれに含まれる訳だが、いわゆるインド由来のカレー料理とは似て非なるものであり、日本のカレーライスの方が、味覚的にはインドのカレーにはまだ近いと思う。
パーリ語と同じアーリア系(インド・ヨーロッパ語族)の言語である英語の soupやドイツ語の suppe と、この比丘戒に出て来る「スープ」に当たる言葉は、たぶん語源が同じなのではないかと想像するのだが、西洋のスープもインドのカレーもタイのゲーンも、本来はその味付けに関わらず、汁気を含んだ煮物料理の総称だから、この箇所を「おかず」と訳した佐々木師の一見ちょっと古めかしくも思える訳語は、案外、的を得ているのかも知れない。
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