京都の宇治で、どこか穴場はありませんかと人に聞かれたので、宇治の町中でなら、興聖寺でしょうか? 少し離れても良ければ、黄檗宗の本山・萬福寺が私ならお勧めです、ただ反対に余りお勧めはしませんが、「わが庵は 都の巽 しかぞ住む 世を宇治山と 人は言ふなり」でお馴染みの喜撰法師が籠った喜撰山というのもありますよと、お答えしてみました。
その方は、案外に喜撰山にも興味を示されたようでしたが、興聖寺からの登山道と、麓からの舗装道の二通りの行き方があることを、実際にインターネットで検索して、ちょっと自分たちには無理だから、今回は諦めますとのことでした。
さてさて、この喜撰法師ですが、とても興味深い人物です。古今集と百人一首という日本有数の歌集の両方に「わが庵は」の歌が採られ、なおかつ六歌仙にも数えられているにも関らず、その確かな伝記は未詳。
今は喜撰山と呼ばれる当時の宇治山に籠り、神仙の如くに遷化して、姿を残さず昇仙したとも伝えられますが、それはこの娑婆世界でこれほど有名でありながら、その痕跡も経歴も残さない鮮やかさから、逆に生まれた伝説なのではないかと思います。
今の喜撰山には簡単な標識があるだけで、喜撰洞と呼ばれる岩の隙間に法師の像が見えるばかり。
その像に袈裟の彫りも磨耗して見えず、本当にこれはお坊さんの像なのだろうかと見紛う程で、それも却って喜撰法師らしいとは言うものの、世捨て人界の大先輩でありながら、余りに質素な旧跡だなあと思って詠んだ拙い一句、
先達に せめて衣を きせん洞

おしまい。
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