知り合いのお坊さんが、戒名に付ける「信士」って、読みは「しんじ」ですよね? こないだのお葬式で葬儀屋さんの司会の方が、何度も「しんし」って読むんで、今さらながら気になって、と仰った。
これはどちらでも良い読み方ではなく、「しんじ」だと思う。念のために手持ちの仏教辞書2冊を調べてみたら、「しんじ」と濁る読み方のみ、記載されている。ちなみに一般の辞書である「大辞林」を見たら、見出しは「しんじ」だが、(「しんし」とも読む)と書いてある。つまり、正しくは「しんじ」だが、一般世間には「しんし」と読む人もいるということなのだろう。
こういう例は他にもある。例えば仏法僧の「三宝」。正しい読みは「さんぼう」だ。これも一般の辞書や、それを転載したインターネットなどに、(「さんぽう」とも読む」)と書いてあることも少なくないが、仏教辞書には「さんぼう」以外の読みは記載されていない。だから「三宝」の読み方は、ブレることなく「さんぼう」だ。
多分、お供え物を載せる台の「三方」には、「さんぼう」と読む場合と「さんぽう」と読む場合があるのと、またもう一点、「三宝」と同義語である「仏法僧」(ぶっぽうそう)の読みに、「ぽ」の音が含まれていることも、混乱を高める原因なのかも知れない。
「今昔物語集」を読んでいると、「三宝の加護」「三宝の霊験」「三宝を篤く供養する」といった表現が頻出する。「仏さま」ではなく、「三宝=仏法僧」への帰依を重視するところが、仏教の本質をよく踏まえていて好ましい。「三宝」はいい言葉だ。
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