神と極楽 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

インドで活躍したマザー・テレサが列聖されたそうだ。列聖とは、ヴァチカンから聖人だと認定されることを指すのだが、これにはその人の死後に奇跡が起こり、それを正式な奇跡であるとヴァチカンが認める必要があるそうで、当該の奇跡が、ブラジルの男性の身の上に起こったのだそうだ。

折りしもヴァチカンのサンピエトロ広場では、12月18日からクリスマス・ツリーの点灯が行われているとのこと、キリスト教に縁の薄い日本人からすると、色々と興味深い慣習だ。

作家の遠藤周作は、日本人にとって、キリスト教的な意味での「神」とは何かというテーマを追求したことで知られるが、先日、思うところあって、遠藤の「海と毒薬」を読み直してみた。私がこの本を読むのは、多分、中学生の時以来だ。

当時の私は探偵小説ばかり読んでいて、知り合いの大人の家にある推理小説の本を片っ端から借りていた。そのうちの一冊である、遠藤周作が書いたミステリとして知られていた「闇のよぶ声」を読んだら、この本は「海と毒薬」と表裏一体を成す作品であると解説に書いてあったので、そちらにも手を伸ばしてみたのだ。

今の中学生も、読書感想文のために「海と毒薬」を読むことがあるそうだが、今回読んでみて、読みやすいのに深いテーマを含んだこの作品を、当時の私がどれほど理解できていたものだろうかと、改めて思った。

「五十六億七千万 弥勒菩薩は年を経ん」という和讃が出て来たのは、よく覚えていて、多分、私が「弥勒菩薩」という言葉に出会ったのは、この本が最初だと思うのだが、しかし、「神なき日本人にとって、神とは何かを追求した小説」と解説に書いてあるのに、物語の中に「神」に関する議論は、ほとんど出て来ず、なぜこの本が「神」についての小説だとされているのかが、中学生の私には全く分からなかった。

実を言うと、この小説のモデルになった、終戦直前に九州帝大で起こった生体解剖事件に関するNHKの番組を、先日、たまたま見る機会があり、今は仏教者となった私自身、「人間とは何か」ということについて、深く思うところがあったので、中学生の時に読んだきり、一度も読み直したことのない「海と毒薬」を、読み直してみようと思ったのだ。


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