日本におけるLCCの普及が今ほどでなかった頃、自分がお金を出して別に食事を頼まない限り、機内食が出ないということに違和感を感じる人がまだ多く、どのLCCなら食事の持ち込みに関しては厳しくないだとかの情報が、色々とインターネットに出ていたものだが、段々と日本人もLCCの方式に慣れて来た。
事前にインターネットで食事を予約した方が、さっさと食事が給仕されて有り難いと思う人はそうしているし、飛行機に乗ってから普通に機内でお金を払って注文している人もいる。或いは何も食べない人もいれば、自分で食事を持ち込んで食べている人もいるが、何にしても、昔ながらの全員に配られ、飲み物も飲み放題という機内食も悪くはないが、いろんな選択肢を自分で選べるLCCは、旅好きの人には楽しいものではなかろうか。
昔、タイでのテーラワーダ修行を終えて黄衣を脱ぎ、日本の作務衣に着替えて台湾の中華航空で日本に帰る時、空港のロビーに一人でいる私を職員の女の人が探しに来て、何事だったのだろうと思っていたら、後で機内に坐るや否や、他の観光客に先駆けて、ヴェジ・メニューが運ばれて来たことがある。
私はこのことが大変に印象深く、今でも時々、人に話すのだが、よく海外に出かけるお坊さんで、いろんな航空会社の飛行機に乗る方なら、同じような体験や、或いは機内食にまつわる、もっと違ったお坊さんならではの色々なエピソードをお持ちかも知れない。機内食というのは駅弁と同じで、旅愁や旅の思い出と、どこかで繋がる懐かしい食べ物だ。
そう言えば、江戸川乱歩の最晩年の作品「ぺてん師と空気男」の中に、主人公の男が駅弁を食べるシーンがある。普通の人には少しもうまくない、折り詰めの堅い御飯と堅い煮魚と卵焼きと奈良漬の弁当が好きだ、わざわざ駅弁を食べるために電車に乗る、などと書いてあるのだが、子どもの時にそれを読んで、却って美味しそうだなあと思ったものだ。
今の日本の駅弁事情は多様化していて、昔のそうした決まりきった献立よりも工夫を凝らした弁当がたくさんあるけれど、アジアでは、昔の日本みたいに、弁当売りがホームから、或いは車内に乗り込んで、弁当や食べ物を売りに来てくれる。
或いは台湾では駅に弁当屋があることが多いのだが、それも含めてアジアの駅弁はどれもみんな、お店や屋台で食べるのと変わらない、出来立ての素朴な美味しさだ。
インドではもちろん車内に乗り込んで来る食べ物売りも盛んだけれど、特急や寝台車の正規の弁当も懐かしい。注文を取りに来てくれて、たいていヴェジかノン・ヴェジかのどちらかを選ぶ。
サブジ(野菜カレー)や冷えたチャパティやアチャール(漬物)などが、紙製のランチボックスに入って来て、お店で出来立てを食べるのに比べたら、決して上出来ではないはずなのに、深夜でお腹が空いていたりすると、たまらなく美味しい。正に堅い魚や冷たい牛肉が、旅愁と綯い交ぜになって旨さをかき立てるのと同じ類の駅弁だ。
※ホームページ「アジアのお坊さん」本編も是非ご覧ください!!
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