旅に病んで | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

子どもの時なら、風邪を引いて辛ければ、学校を休んで寝ていればいいが、大人の場合は会社を休めず、風邪薬を飲んで、朦朧とした意識の中で仕事をしていて、少しの間、何もせず、ゆっくり一眠りしていれば、こんな風邪くらい、すぐ治るのにと思うことは、しばしばあるだろう。

旅先での病、というものも、これに近い。移動の連続で少しの無理が重なって体調を崩す。慣れた環境でなら、こんなことにはならないのに、或いはなっても、すぐに自分の体力で治せるはずなのにと歯痒い限りで、場合によっては、ある程度、回復したら、次の目的地に向かわなければならなかったりするから、思うように治らない。

インドに赴任した直後の、まだインドに慣れていない時に、ブッダガヤからデリーまで、寝台ではない昼の電車で、堅い木製の椅子に坐ったまま、身動きも取れないすし詰めの車内で何時間も辛抱し、それが酷暑期の5月だったこともあって、たちまちに身体を壊した。

さて、これは何度目かの香港で、やはりインドからの帰路で疲れていたのか、宿の冷房が自分でスイッチを切れない仕組みだったため、一晩寝ただけで、きつい風邪を引いた。

また、四国八十八ヵ所を徒歩で巡礼中、最後の八十八番札所である大窪寺を目前に体調を壊した。宿と野宿を繰り返して眠った疲れが蓄積したのか、先が見えたことで油断したのか、早く歩き始めたい、けれど身体が動かない、そんなことを考えながら、とめどなく眠り、夢を見る。

そんなこんなで、「夢は枯野をかけめぐる」という芭蕉の辞世には、本当に実感が籠もっていると思う。




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