「霊位」の解答 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

位牌に彫ってある「霊位」という文字についてだが、四十九日を過ぎた後に、戒名の下に霊位という文字が付いているのは間違いではないのか、そもそも霊位という言葉自体を使うことの是非がどうなのか、という話を先日、書かせて頂き、各宗派の御僧侶の意見が聞けるなら、と思ったところ、複数の方からの回答を得た。
 
まず、天台宗では、位牌はともかく、供養・回向の文句に「霊位」という言葉が普通に使われている。私としては、生きている方に対して「様」を付けるのと同じように、故人に対して敬称を付けている感覚で、回向の文句の中でなら、使っても良いというくらいの意見だったのだが…。
 
同じ天台宗の方に聞いてみたら、読経を聞いている施主に聞かせる意図で、回向文・風誦文の中でなら、場合によっては「霊位」という言葉を使用するが、位牌には基本的に「霊位」は使用しない、とのこと。「霊位」に限らず、四十九日後に「霊」という文字が入ることには、やはり多少の違和感があるとのことだ。
 
浄土真宗では位牌・四十九日・中陰・極楽・死後観・法名(真宗では戒名と言わない)など、すべてが他宗と違っているだろうと予測したのだが、真宗以外の他宗派では、一般的にどう考えているか知りたくて、曹洞宗のお坊さんに直接、お尋ねしてみた。
 
そうしたら、結論から言えば、位牌の「霊位」に限らず、「霊」という文字そのものを基本的に使用しないようにしている、とのことだった。
 
さて、問題の浄土真宗。お聞きした御僧侶の方の回答では、真宗では「霊位」は一切使いません、とのこと。誠に明確だ。
 
位牌に関しては、主に昔、仏壇屋さんがついつい勝手に「霊位」という字を入れてしまうことはあったそうな…。
 
ついでに教えて下さったことだが、現在の宗派の公式見解として、法名の下に「信士・信女」などの位号も付けない、また「釈尼」の「尼」も使わない、黒位牌も作らない。
 
また、これはお寺によってだが、黒位牌を作らないだけでなく、葬儀で使う白木位牌も和紙を貼って法名を書き、白位牌はあくまでも和紙を貼る台であって、「位牌」ではないということを表現する寺もあるとのことで、なるほど、徹底的に理路整然だ。
 
 
という訳で、各宗派の、もっと多くのお坊さん方にお尋ねすれば、微妙に違う見解もあるのだろうけれど、おおむね結論として、宗派によって考え方自体の違いは様々あれど、仏教の供養において「霊」や「霊位」という文字はなるべく避けるべきで、特に位牌の戒名・法名の下に「霊位」という文字を彫るのは、はっきり言ってしまえば、よろしくないということのようだ。
 
 
 
※インド日本寺駐在同期のH師を始め、ご回答頂いた御僧侶各位に、厚く御礼申し上げます。                                                                                                                    合掌
 
 
 
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