四弘誓願(しぐせいがん)という仏教の偈文(げもん)が、宗派や伝承によって少しずつ使われている文字が違う、ということを書こうと思ったのだが、違いをずらずら並べ立てると煩雑でしょうがない。とりあえず、よく見かけるバージョンを以下に一つ挙げてみる。
衆生無辺誓願度(誓って衆生を救います)
煩悩無尽誓願断(誓って煩悩を断ち切ります)
法門無量誓願学(誓って法門を学びます)
仏道無上誓願成(誓って仏道を成就します)
大乗仏教の精神を表すと言われる、この四弘誓願、元は心地観経に原型があり、天台大師智顗(ちぎ)によって、形を整えた、などと仏教辞書やインターネットにも書いてある。
確かに天台大師の「摩訶止観」には四弘誓願が出て来るが、心地観経の文は現在の四弘誓願にさほど近いと、私には思えない。本当に心地観経が原型なのだろうか?
また天台宗では、「摩訶止観」の他に、阿弥陀念仏における「五念門」にも、別の文字を使った四弘誓願が出て来る。
ちなみに冒頭に引用したバージョンは、禅宗などで使われ、一般の仏教書に引用されることも多いのだが、天台宗でも坐禅止観の次第においては、このバージョンが使われている。
また、インターネット上には、禅宗、浄土宗、浄土真宗などにおける四弘誓願が、様々なサイトに掲載されているが、それらもそれぞれ少しずつ文字が違う。
さらに真言宗では、一つ数の多い五大願というものが使われていて、などとインターネットに書いてあるのだが、実はこれは真言宗のみが使うのではなく、正確には密教で使うものなので、五大願は天台宗でも同じものを使うのだ。
従って、天台宗に限って言えば、五大願も含めると、4つのバージョンが混在していることになる。
これに各宗派の四弘誓願を並べて、その違いを指摘しても、煩雑なだけだし、またインターネット上に、実際に何種類かの四弘誓願を列記してくれているサイトもわりとたくさんあるので、ここに書くのはやめにした。
で、その代わりに手元にたくさんある、韓国と台湾の経本を調べてみることにした。
するとたまたまかも知れないが、少なくとも私の持っている台湾の経本には、どれも四弘誓願が載っていない。
韓国のものには、何冊かに載っていて、内容は冒頭に記した、日本の禅宗系のものと全く同じ文字で、ただその後に、違った繰り返しがある。
衆生無辺誓願度
煩悩無尽誓願断
法門無量誓願学
仏道無上誓願成
自性無辺誓願度
自性無尽誓願断
自性無量誓願学
自性無上誓願成
一体、なぜにこれほど四弘誓願には別バージョンが存在するのか、今後の研究課題としたいが、それにしてもこうやって書いていても、歯痒くてむずむずする。
※お知らせ※
タイの高僧プッタタート比丘の著作の
三橋ヴィプラティッサ比丘による日本語訳CD、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
並びに仏教の要諦の解説書「仏教人生読本」を入手ご希望の方は
タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい。
タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい。
※ホームページ「アジアのお坊さん」本編も是非ご覧ください!!