アジアの衣鉢 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

またミステリの話で恐縮ながら、私が「衣鉢(いはつ)を継ぐ」という言葉を覚えたのは、子どもの時、創元推理文庫の目録に「ポオの衣鉢を継ぐレイ・ブラッドベリ」という表現があったからで、いや、覚えたというのは正確ではなく、「後継者」という意味だとは文脈から分かったが、正確な意味はしばらく知らずにいた。

お坊さんになってしばらくして、タイで修行させて頂いた時、テーラワーダ仏教では、いまだに三衣一鉢(さんねいっぱつ)、すなわち衣と托鉢用の鉢だけが、本来、僧侶の持ち物の全てであった伝統の名残りを、多分に残していることを知った。得度式の中でも、三衣一鉢を授かることが、重要な要素となっているし、和尚からの訓戒にも、その大事さが説かれることが多い。

現代日本の禅宗で、「衣鉢」ということが、どれくらい実際的な、或いは象徴的な意味を持っているかを知らないので、今度、知り合いの禅僧の方に会ったら聞いてみようと思うが、天台宗でも、現在では象徴的な意味合いが強いとは言うものの、布薩六念などと言って、僧の持ち物としての三衣一鉢を確認する儀式がある。

さて、2、3年前に、三橋ヴィプラティッサ比丘が、身辺整理の一環と言って、鉢と黄衣を、仏教辞書やその他の物と一緒に送って下さったことがある。それで師の「衣鉢を継いだ」などとはさらさら思わないが、「衣鉢」という言葉の意味からすれば、心して大事に保管し、いずれ自分も誰かにそれを委ねなければと…。

                
                      
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※写真は台湾の中台禅寺で見たパネルです。
 
 
 
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