人間の研究 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」は、名探偵明智小五郎の初登場作品として有名ですが、その中に、有名な「僕は人間を研究しているんですよ」という、明智の台詞があります。
 
 小学生の頃、格好いいなあと思いました。思いましたけれど、今ひとつ、意味は分かっていなかった。人間を研究? 分かったような、分からんような。分からなかったお陰で、格好を付けて、自分もこの言葉を口にしてみた、などという、恥ずかしい思い出がないのは幸いでした。
 
 中学校くらいになると、だんだん余計な知識が増えて行くもので、将来の夢を聞かれて、「心理学者になりたい」などという同級生も現れ出しました。心理学者。どうせ訳も分かっていないのに、格好良く聞こえる言葉を口にしてみたんでしょうね。
 
 人の気持ちを勝手に推測しては、「お前、心理学者になれるぞ」などと友人から言われて喜んでいる、他の同級生もいました。そんなくらいで心理学者になれたら世話ないわと、当時から偏屈だった私は、心の中でこっそり思っていた訳です。
 
 どうしてこんなことを書いているかと言うと、お坊さんになった今、人間なんていうものは所詮、みたいなことを、自分で書いたり話したりすることが多いのですが、先日、同じ年頃のお坊さんが、いやあ、お参りの人たちがこれこれの言動を取る心理を推察すると、大体こういう理由に尽きるよとか、これこれこういう風にしてあげたら、人間なんて、こう感じるものだから、こういう風にしてあげればいいんですよなどと仰っておられる内容が、的外れで的外れで、よくよくの洞察力がない限り、安易にこういう言葉を口にするのは恥ずかしいなあと、思ったからなのでした。他山の石、他山の石。
 
                                
                               おしまい。
 
 
 
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