今さらながら、便所神 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 お坊さんになって何が良かったかと言って、お化けや妖怪が怖くなくなったこと、子どもの頃、無類の怖がりだった私にとって、それは何より喜ぶべき変化ではあった。
 
 便所に入ったら、下から手が出て来る、といったタイプの怪談が、子供の時には本当に怖くてしょうがなかったが、今にして思えば、あれは汲み取り便所に特有の怪談だったはずだ。
 
 私の育った大阪市内は、私の子供当時ですら、みな、水洗便所だったから、お化けだって下から手の出しようがない、いや、お化けだったら、どんな形状でもあり得るのだから、水洗便所の中からでも、出て来ようと思えば出て来れるのかも知れないが、とにかく子どもの私は、そんな理屈を抜きにして、単純に夜、一人でトイレに入るのに怯えた。
 
 さて、もう何年も前、トイレの神さまに関する歌が流行って、当時は社会現象にまでなりかけたが、今さら何を言っているんだと言われるのを承知で言えば、私は当時、この歌の予定調和的な深みのなさが、とても気に入らなかった。
 
 とりあえず、私の子供の時のトイレは怖い所だった。今、お坊さんになった私は、トイレに入る度に入厠作法という作法を修し、烏柩沙摩明王(うすさまみょうおう)の真言を唱えている。
 
 烏柩沙摩明王、怖いお顔だよ。そんな甘いもんじゃないよ。
 
 と、毎日、トイレに入る度に、烏柩沙摩明王のお顔を思い浮かべて、今さらながらそう思うので、こうして書かせて頂きました。
 
                                おしまい。
 
 
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