お坊さんの草履 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 中国や台湾や韓国のお坊さんは布靴を履くが、日本のお坊さんの足許は、雪駄すなわち草履状の履物だ。
 
 日本仏教にも草鞋(そうかい)という靴状の物があるが、そんなに目にすることはなく、大抵は雪駄を使用する。また、山内では下駄を履くこともある。
 
 中国や台湾や韓国のお坊さんが、正式な法衣を着ていない場合には、普通のサンダルやつっかけ状の草履などを履いていることもあるが、これは日本でも作務衣の時には雪駄ではなく、普通の靴を履いたりすることもあるようなものだろうか。
 
 インドや東南アジアなどのテ-ラワーダ(南方上座部)仏教のお坊さんは、普通のゴム草履すなわちビーチサンダル状の物をはいていることが多い。これは履物に関する決まりがなかったり、緩かったりするからではなく、本来は履物を履かずに裸足でいるのが正式なので、履物を履くなら何でも良く、暑い国々なので、ゴム草履を履いているだけのことだ。
 
 タイでも、バンコクなどでは托鉢時にサンダルを履いている場合が多いが、チェンマイなどの北部や、ワット・パー(森の寺)と呼ばれる瞑想寺院、バンコクでも戒律の厳しい派などでは、托鉢時だけは現在でも裸足を守っているお寺が多い。
 
 ところで、「如法」という言葉は、教えの通り、決まりの通りといった意味なのだが、天台宗の法儀集で「如法作法」という場合、「インド伝来以来の作法」と置き換えられる事柄が多いなと、前から思っていた。
 
 「如法作法の三礼」と言えば、インドと同じ、立ったり坐ったりする投地礼だし、「如法衣」という袈裟は、テーラワーダの黄色い衣と形や色がほぼ同じだ。
 
 で、坐禅の作法について法儀集に、本来は如法作法だから、時計や足袋も身に着けないのが正式である、と書かれていて、あ、やっぱり南方と同じだから、裸足が正式なんだと思ったものだ。
 
 さて、後は余談。日本のお坊さんは、多少の材質の違いはあれ、みんな同じ形状の雪駄を利用するので、法要などの時に、他人の履物と間違えないよう、マジックなどで雪駄に目印を付けている方が多い。鼻緒のどこかに点を打ったり、目立たない箇所に自分の法名の一部を小さく記したり。
 
 それでも同じような場所に印をしているだけでは結局まぎれてしまうので、私は左右対称でない箇所、たとえば鼻緒なら両方の鼻緒の各右側ごとに印を付けている。
 
 普通の人は、草履に印をする時は、どこに印を打つにしても、左右対称に打つものだ。だからこうしておけば、他人の草履と間違うことはないだろうという話を先日、人に話したら、思ったほど、感心してもらえなかった、というところから、今日の話を思いついたんですが…。
 
                              おしまい。
 
イメージ 1
※カラチ国立博物館蔵「比丘跪像」(4~5世紀)は、裸足のお坊さんです。
 
 
※お知らせ※
タイの高僧プッタタート比丘の著作の
三橋ヴィプラティッサ比丘による日本語訳CD、
アーナパーナサティ瞑想の解説書「観息正念」、
並びに仏教の要諦の解説書「仏教人生読本」を入手ご希望の方は、
タイ プッタタート比丘 「仏教人生読本」「観息正念」改訂CDーR版 頒布のお知らせをご参照下さい!!