タイ語の寝覚め | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 うとうとしながら、ずっと誰かがタイ語の短いフレーズを解説している細切れの夢を見ながら目が覚めた。昨夜、下川裕治氏の「タイ語の本音」(双葉文庫)という本を、読み終えてから寝たからだ。
 
 正直に言うと、私は下川氏の旅本を、「香田証生さんは、なぜ殺されたか」(新潮社)以外に、あまり読んでいない。旅雑誌の連載などに執筆された文章はいくつか読んだことがあるが、どうしても書店で手が伸びない。
 
 何度も書いたように、大好きなタイ本は前川健一氏の著作だ。「バンコクの好奇心」を嚆矢とする90年代に書かれた前川氏の一連のタイ本は、2000年代以降にも読み継がれるべき不朽の名著だ。
 
 その後のタイ事情を知るための本として、1997年の「タイ現代情報事典」(ゑゐ文社・2001年 2刷)、2000年の「タイ現代カルチャー事典」(ゑゐ文社・2004年 2刷)があるが、それ以降のタイ事情がバランスよく分かる優れた本が、なかなか見当たらない。
 
 日本人バックパッカーが減ったと言われ、「旅行人」が休刊になったりする一方、ごく普通の若者が、カオサンに短期滞在するようになった2000年代後半から現在に至るまで、一山なんぼのカオサン系ライターが書いた安直な旅本は世に溢れているが、前川健一レベルのタイ事情本は、なかなか現れてくれない。
 
 そこで旅行作家としては、もはや中堅どころである下川氏の「タイ語の本音」を手に取った次第だ。親本の「タイ語でタイ化」は1999年の発行、文庫化が2002年、そして2012年に「タイ語の本音」とタイトルを変えて、大幅加筆改稿の上、再版された。
 
 記憶に新しい大洪水の話や、携帯からスマートフォンへと移行するタイの電話事情などの新しい情報の下に、
現在のタイやタイ人気質について書かれているので、この本はなかなかに面白い。
 
 文章力や物の見方・考え方という点では、前川氏のそれには遥かに遠いと思うけれど、少なくとも明け方にタイ語の夢を見るくらいには、十分に楽しませて頂いた。
 
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