「ビルマ仏教ーその歴史と儀礼・信仰」について | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 テーラワーダ(上座部)仏教は、信仰されている国が違っても、教えやお経や袈裟や法衣に違いがないので、例えば私はタイでの比丘出家体験しかないけれど、それを基にミャンマーやスリランカの仏教やお坊さんに出会った時も、その実状を容易に類推することができる。

 ただし、どこまでも私にとってはタイでの修行体験がベースだから、タイ仏教だけの特殊性や、タイ語だけに特有な仏教表現から離れて物事を考えるのは、なかなかに難しいのだが、この感覚は、ミャンマーのみで修行された方、スリランカのみでの修行体験を持つ方々にも、共通なのではないかと思う。

 さて、私はタイでの修行以前に石田米雄氏の「タイ仏教入門」(めこん)を読み、現地でも読み返して参考にし、その後、現在に至るまでずっと愛読しているので、この本が、タイ仏教のみならず、テーラワーダ仏教を日本人が知るための最も優れた本だと信じているのだが、この見方にも多少は、私のタイ仏教びいきが関係しているのかも知れない。

 なぜこんな話を書いているかと言うと、先日、「ビルマ仏教ーその歴史と儀礼・信仰」(池田正隆 著・法蔵館)を読み直してみて、ミャンマーの仏教についての概説と現状、僧院における日々の修行のスケジュール、得度式を始めとする儀式の詳細、年間における主要な法要などを、分かりやすい文章と体裁で著したこの書は、「タイ仏教入門」と並ぶ名著だなあと思ったからだ。

 一般の方が読んでも過不足なく分かりやすくて読みやすい体裁のテーラワーダ仏教入門書というのは意外と少ないのだが、そんな中で、「タイ仏教入門」と「ビルマ仏教」は、タイとミャンマーという入り口の違いはあれど、どちらも実に良い内容だ。

 学術的すぎず、旅行記や体験談風エッセイに終わらず、個人の修行、瞑想、信仰、思想に偏りすぎず、かと言って仏教という宗教の教えにも即した内容であり、お坊さんが読んでも、一般の方が読んでも、研究者が読んでも、それぞれに満足できるという点で、この2冊はどちらもお勧めだ。特に、今後、テ―ラワーダ仏教で得度して比丘修行されるご予定の方は、2冊とも必読。


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