アジアの波羅提木叉 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 タイなどのテーラワーダ(上座部)仏教で、僧侶が守るべき戒律は227戒、この戒律の条文のことをパーティモッカと呼び、パーティモッカのことを漢訳では波羅提木叉(はらだいもくしゃ)と言う。

 パーティモッカを月に2度、読み上げて、戒律の遵守を新たに誓うのがウポーサタの儀式で、これの漢訳は布薩(ふさつ)と言う。

 上座部の227戒は具足戒とも呼ばれ、中国の仏教では戒律の系統が違って250戒、さらに中国系仏教では大乗仏教独自の菩薩戒というものを、これに併せて遵守する。

 日本の伝教大師最澄は250の具足戒を棄却して、菩薩戒だけを守ることにし、これを円頓戒と呼んだ。このことが当時、大波乱を巻き起こした訳だが、しかし円頓戒においても戒律の条文は波羅提木叉と呼ばれ、僧侶は授戒後に折に触れ、布薩を行うことになっている。

 菩薩戒の基盤は梵網経というお経で、天台宗では日常、その一部である梵網菩薩戒経偈という短いお経を読誦する。そのお経の中に、波羅提木叉という言葉が出てくるのだが、私はその文字を目にする度に、タイのお寺で月に2度、お寺の僧侶全員が必ず参加して行われていた、ウポーサタの儀式を思い出す。

 そして、戒律全文を暗記している僧侶が条文を暗誦して、「パーティモッカー、パーティモッカー」と唱える、その独特の節回しが心によぎり、日本仏教はインドの仏教からかけ離れてしまったのではなく、やはりおなじ基盤に立つ、同じ教えを奉じている仏教なのだなあと、嬉しく思う。

 そんなことを言うと、テーラワーダ仏教者の方からは、お前は比丘サンガの何たるかを分かってていないと言われ、大乗仏教者からは円頓戒の精神を分かっていないと言われるかも知れないが、それでもなおかつすべての仏教は空と縁起と慈悲と智慧を根幹とした、同じ教えに基づくのだと思いたい。




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