タイ語と英語とアジアの思い出 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 初めて一人きりで飛行機に乗ったのは、タイでの修行が決まって、バンコクに向かう時だったのだが、乗り継ぎ便のトランジット係員の尋ねている、「checked baggage」やら「check in baggage」の意味が分からずに難儀した。

 お坊さんだから荷物は頭陀袋ひとつで、預け荷物などなかったのだが、今も飛行機に乗るたびに、この英語が頭に浮かぶ。

 タイのお寺の修行に入って、英語や日本語のできる人がたまにいると、大変に助かった。小さい怪我をして化膿しかけた時、一時出家僧の中に若い医者がいて、薬箱から軟膏と飲み薬を処方してくれた。

 1日3回飲みなさい、「three times a day」と言ってくれたのが、よく旅行会話集の後ろの方の「トラブル・病気」みたいな章に書いてある「一日に何回薬を飲む」という表現の、実地での聞き初めだった。「一日に何回」という英語を使わなければならない時、今でもそのお坊さんの顔が目に浮かぶ。

 またある時、覚えたてのタイ語で別のお坊さんと会話している時、「ルアイ、ルアイ」と言われて意味が分からずにいると、英語で「so so」と言ってくれたのだが、「まあまあ」を表すタイ語も英語も、やっぱり初めてこの時、聞いた。

 その頃、カンボジアを巡礼して、泊めて頂いたプノンペンのお寺の若いお坊さんに、是非、外国人僧と話がしたいからと言われて、寺の一室で歓談した。

 彼はタイ語もできるから、ということで、初めはタイ語で話していた。彼のお蔭で、こんな時はこんな風な言い回しをするんだと覚えたこともたくさんあって、いまだに思い出すことが多いのだが、私のタイ語力がなさ過ぎて、悪いけれど英語で話してくれませんかと、会話の途中で言われたことも、今となってはいい思い出だ…。

 結果、その頃からタイ語も英語も大して上達してはいないのだが、ちょっとずつ覚えたタイ語も英語も、覚えた時の状況は、どれもアジアでの思い出と結びついていて、自分にとってはとても懐かしい言葉ばかりだ。

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