言わずもがなの解説かも知れませんが、タイの高僧プッタタート比丘のお名前の、パーリ語読みが「ブッダダーサ」です。「プッタタート」はタイ語読みですから、「ブッダダーサ比丘」と「プッタタート比丘」は同じお坊さんのお名前です。英文の場合は、「ブッダダーサ」表記が多いようです。
不朽の名著「タイ仏教入門」(石井米雄著・めこん)の最終章には、最近のタイ仏教界の動きとして、開発僧についての一文と共に、「プッタ・タート比丘」という表記で、かなり詳しい紹介があります。
この本の親本である「戒律の救い」(淡交社)は1969年の発行ですが、1991年に「タイ仏教入門」として改版が出版された時の後書きに、「ワット・パー」(森の寺・瞑想を主とする寺院)が増加しつつあるといった最新情報と共に、「・」のない表記で、「プッタタート比丘」の活躍は、益々盛んであると報告されています。
ちなみに、「ブッダゴーサ」というのは、上座部仏教における最も主要な注釈書である「清浄道論」を著したブッダゴーサ長老のことです。カタカナ表記だと、「ブッダゴーサ」と「ブッダダーサ」はよく似ていますが、ブッダゴーサ長老は5世紀のインドに生まれ、スリランカに渡った歴史的な人物であり、全く別のお坊さんです。
などと偉そうに言っていますが、かく言う私もタイでの上座部僧修行を終えて、インドの日本寺に赴任した時、ちょうどその頃からプッタタート比丘の著作の日本語訳に取り掛かっておられた当時の駐在主任・三橋ヴィプラティッサ比丘に、ブッダダーサっていう、お坊さん、知っていますか? と聞かれて、「清浄道論」を書かれた方ですか? と答えてしまった経験がございます。
ああ、スアンモークのアーチャン・プッタタートのことですか! と、どうにかその場はお話できたのですが、まだまだ私の知識は浅いものでした。
もしもインターネットなどで検索している方たちの中に、ブッダゴーサとブッダダーサとプッタタートの違いでつまづいている方がおられてはいけないと思い、老婆心ながら、駄文をしたためさせて頂いた次第です。
合掌。