祗園精舎の金剛経 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

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 インドの祗園精舎を参拝し、韓国寺に数日泊めて頂いたことがある。住職の留守を守る年配のスンニム(スニム・お坊さん)の世話で、朝昼晩3度の勤行にも参加し、朝の4時と晩の5時は礼拝と坐禅、昼の10時は金剛経1巻を読誦した。

 般若心経が英語では Heart sutra、法華経が Lotus sutraと呼ばれているように、金剛般若波羅蜜経、すなわち金剛経も Diamond sutra として西洋でも知られているし、韓国や台湾では、例えばバスの運転手が運転席に置いているのがこのお経だったり、写経用の用紙が日本と違って般若心経ではなく金剛経だったりするほど一般的なのだが、日本では禅宗を除いては、余り馴染みのあるお経だとは言えないかも知れない。

 さて、スンニムはカタコトの英語で、Meditation(瞑想)と Mindfulness(sati、気づき)について、熱く語って下さった。Diamond sutra はNo.1だ、「Who am I?」(フー アム アイ)について語っているこのお経の言わんとするところは、結局のところ、「No、I」(ノー アイ・無我)なんだよ。

 祗園精舎を舞台にしたこのお経は、空の思想を説きながらも、まだ用語としての「空」という言葉を使用しておらず、大乗経典でありながら、原始仏典の匂いを濃厚に放っている。一般の日本人にはあまり馴染みがないかも知れないが、大変重要なお経だから、般若心経とセットで岩波文庫にも入っている。もっと読まれてもいい経典だ。


※2008年4月2日投稿分を改稿しました。
 写真は2007年仏誕会における、韓国ソウル曹渓寺にて撮影した、金剛経を読むお坊さんの人形。