リキシャ、トゥクトゥク、タクシーあれこれ | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

・インドでは今でもリキシャはもちろんのこと、メーターの付いているタクシーに乗る時ですら、値段交渉しなければならないことの方が多い。それがインドの旅の醍醐味だと考えたり、値段交渉に慣れていることを自慢する旅行者の方もあるかも知れないが、やっぱり乗り物は、楽に乗れた方が楽だ。

・インドでリキシャという文字を英語で書類に書かねばならないことがあって、インド人が書いた表記を見たら、「rickshaw」となっていたので、「rikisha」ではいけないのかと尋ねたら、インドでは「rickshaw」としか書かないのだと言われ、発音と表記の関係を、そこで学んだものだ。

・インドのリキシャやタイのトゥクトゥクに代表される三輪タクシーに関する著作で、「東南アジアの三輪車」(前川健一著・めこん)を超えるものはない。リキシャという言葉と人力車という言葉が似ているのは偶然だろうか、トゥクトゥクと日本の昔の三輪トラックのミゼットって関係あるのだろうかと考える旅行者は少なくないだろうけれど、それらの問題をここまで突き詰めて考え、調べ上げたのは、前川氏ならではの偉業だ。

・現在のバンコクでは、面倒な値段交渉をしてトゥクトゥクに乗るよりもメータータクシーに乗った方が、昔と違ってトゥクトゥクよりかえって値段も安いし、エアコンも効いていて快適だということは、多くの方が書いている通りだ。

・ではトゥクトゥクの良さは何かと言えば、タイ人が使う場合の利点はさて置き、外国人である我々にとっては、「風情」の一点に尽きるだろうと思う。今の若い日本人個人旅行者の方たちが、どの程度、トゥクトゥクを利用しているのかは定かでないが、日本のいろんな職種のお店の前に、がんばって輸入したのであろう本物のトゥクトゥクを飾ってあったりするのをよく見かけるから、この乗り物が多くの日本人に愛されていることは間違いない。

・日本のタクシー代の感覚からすれば、韓国のタクシーには割安感があるから、うまく使えば大変便利だ。韓国のタクシーでは、端数を切り上げて料金を渡す慣習になっているのも、明朗なメーター会計で値段交渉が要らない上に、こちらの感謝の気持ちを運転手さんに伝える時、いくら上乗せすれば良いかを悩まなくていいから、とても楽だ。

・桂米朝師匠の落語のマクラに、毎日ちょっとの距離でもタクシーに乗って帰る金持ちの社長さんで、いつもなら釣りはいらんと言うような太っ腹な方でも、目的地に着いた途端に料金メーターが上がると腹が立つ、ある日、家の前でタクシーが停まると同時にメーターがカシャッ! 途端に社長さんが叫んだ言葉が、「バックせえ!!」…乗り物はいつも、悲喜こもごもだ。