皆既月食にちなんで…日月を喰らう羅喉星 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

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 2011年12月10日の今夜は皆既月食だそうだが、インドではラーフという魔物が、日食や月食を引き起こすのだと考えられていた。

 ラーフは、乳海攪拌(にゅうかいかくはん)と呼ばれるインドの創世神話に登場するのだが、これがインド占星術に取り入れられて、漢訳では羅喉星(らごうせい)という星の名となり、日本語にも入っている。

 タイにもインド占星術はほぼそのまま輸入され、タイ語でラーフはプラ・ラフーと呼ばれている。月を食べるラフーの姿は、置き物や絵画のモチーフとして、タイのあちこちで目にすることができる。

 仏教国で悪魔の置き物を飾るなんてと奇異に思うかも知れないが、原始仏典のスッタニパータには以下のような一節がある。


貪欲を離れ、諸々の感官を静かにたもち、
月がラーフの捕われから脱したように捕われることのない人々、
そのような人々にこそ適当な時に供物をささげよ。
              
             (岩波文庫「ブッダのことば」95頁)  


2009年7月投稿分を改稿しました。
写真はラフーが月を飲み込むデザインのタイ製Tシャツです。