「法楽」とは何か? | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

 謡曲の「道明寺」は、一人のお坊さんが菅原道真公すなわち天満天神ゆかりの道明寺に参詣して、神々がご本尊の前で歌楽を奏しつつ、神仏一体の理を寿ぐ夢を見るという話です。

 ところで先日、外国暮らしが長かった方に、日本の神社の神さまは、ピーヒャララという笛や太鼓や踊りを見たり聞いたりして喜ぶんですか? と質問されて、私は「法楽」(ほうらく)という言葉を思い出しました。

 一般的には「法楽」という言葉は、神前で仏式のお勤めをすることによって、神さまを喜ばせることを意味し、転じて仏前に芸能を奉納してご本尊である仏・菩薩を楽しませることをも言うようになりました。

 読経のリズムを取るために叩く太鼓のことを法楽太鼓と呼んだり、神さまではなく、お寺で仏さまの前で修法をした後に行う、仏・菩薩や、祖師・神祇などに対する別回向を法楽と呼んだりすることもあって、意外とこの言葉のニュアンスは微妙です。

 ただ私は、神々も人と同じく仏法を聴聞する存在だから、神前での読経を神々も喜ぶという、「法楽」の本来の意味合いが好きです。仏法は神々、人、その他の生き物すべてを含む、一切衆生に共通する真理なのですから。